『呪術廻戦』死滅回游、開幕
2020年から放送を開始したアニメ『呪術廻戦』は、芥見下々の同名漫画を原作にした人気作品。MAPPAが制作するアニメーションは高い評価を受けており、米クランチロールが主催するアニメアワードでは第1期と第2期が連続でアニメ・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなど、世界的な人気も得ている。
現代を代表するアニメの一つとなった『呪術廻戦』。原作漫画は2024年に完結したが、アニメの方はまだまだこれから。今回は、2026年1月8日深夜0時26分より放送を開始した『呪術廻戦』第3期、死滅回游編の第1話と第2話(通算第48話と第49話)をネタバレありで感想を記しつつ、原作との違いについても解説&考察していこう。
なお、以下の内容はアニメ『呪術廻戦』第3期1話&2話/通算48話&49話のネタバレを含むが、アニメでまだ扱われていない範囲の原作漫画のネタバレは行わない。アニメの方を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『呪術廻戦』第3期1話&2話/通算48話&49話の内容に関するネタバレを含みます。
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アニメ『呪術廻戦』第3期1話/48話ネタバレ感想&解説
これまでの『呪術廻戦』
アニメ『呪術廻戦』第3期1話/48話「執行」の舞台は、第2期最終話の直後。虎杖悠仁は呪霊が溢れる魔境と化した東京でひとり呪霊を祓い続けている。第2期のラストでは、脹相が「加茂憲紀」と呼んだ偽夏油が真人を取り込むと、「無為転変」を遠隔発動。あらかじめマーキングしていた2種類の人間、呪物を取り込ませた者と術式を持って生まれたが脳の構造が非術式となっている者の脳を術師の形に整え、最適化された1,000人の術師が世の中に解き放たれた。
加茂憲紀の狙いは、この1,000人の術師に殺し合いをさせ、その先にある目的を達成することだ。さらに1000年にわたって手中に収めてきた呪霊も解き放ち、東京一帯は呪霊の巣窟になっているという状況だ。
アニメ『呪術廻戦』第3期の主題歌はKing Gnu「AIZO」。オープニングのアニメーションでは、九十九や真希といったお馴染みのキャラクターに加え、死滅回游編から登場するキャラクターたちの姿も確認できる。
禪院家の変、甚爾の「誓約」とは?
そして、「死滅回游」は禪院家の相続問題から幕を開ける。第3期で初めて登場したのが禪院家当主の禪院直毘人の息子である禪院直哉だ。強烈なミソジニー(女性蔑視・嫌悪)を抱える直哉は叔母、つまり真依と真希の母を従えて登場。禪院直哉の声を演じたのは京都出身の遊佐浩二で、『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』公開時にも「ハマり役」として話題になった。
同じく第3期で初登場となる扇と甚壱も禪院家の幹部。扇は直毘人の弟で真希と真依の父である。甚壱は伏黒甚爾の弟で、伏黒恵にとっては伯父にあたる。
禪院家当主の禪院直毘人は渋谷事変で漏瑚に全身を焼かれていたが、いよいよ息を引き取ったという。遺言状には直哉を次の当主とすると記されていたが、そこには但し書きが。「五条悟が死亡または意思能力を喪失した場合には、伏黒恵を禪院家の当主とする」と定められていたのである。
そしてこの項目は、直毘人と伏黒甚爾との取り決めによるものだという。アニメ第2期16話では、甚爾と直毘人が恵の扱いについて会話を交わす回想シーンがあった。甚爾は呪術師としての才能が恵にはあると見込み、恵を禪院家で引き取る契約を直毘人と交わしていた。甚爾は、術式があれば恵は禪院家で悪いように扱われないだろうと考えたのである。
おそらく甚爾はこの時に直毘人と誓約を交わしていたが、恵を禪院家に迎え入れるという条件は、「五条悟が死亡または意思能力を喪失した場合」に限られていた。恵は五条悟によって保護されていたため、直毘人がこの条件を付け加えたのだろう。流石の直毘人も御三家の一つである五条家の当主の保護下にある恵に手出しすることはできなかったということだ。
甚爾は死の間際に、2、3年すれば息子の恵みが禪院家に売られる、好きにしろと五条悟に告げていた。五条悟は恵に、禪院家に行けば姉の津美紀が幸せになることはないと教え、自身が高専で恵を預かることにした。つまり、甚爾は禪院家の当主と五条家の当主に息子を託し、どちらに転んでも恵が守られるように仕掛けたのである。なんという出来た(?)パパ。
ここでもまた、去った者と残された者の間の“呪い”が効いてくる。それにしても直毘人は死んでなお好感度が上がっていく稀有なキャラクターだった。
そして今、五条悟が封印されたことによって恵は禪院家に迎え入れられることになった。恵が当主に指名されたのは、禪院家の相伝の術式の中でも強力な「十種影法術」を恵みが引き継いでいたことが明らかになったからだろう。実は禪院家はしがらみだらけの一族に見えて、出自よりも術式を優先する、ある意味で実力主義の一族だったのだと考察できる。
虎杖悠仁 vs 乙骨憂太
もちろん、この決定に納得がいかないのは禪院直哉だ。恵が処刑命令の出た虎杖悠仁の捜索にあたっていると聞き、直哉は恵を殺して自分が当主になるべく東京へ向かうことになる。
虎杖は渋谷事変での宿儺による殺戮を経て、自分から他の術師と距離を置いていた。けれど、とりあえず虎杖悠仁の近くには脹相がいてくれている。「お兄ちゃんだから」という、あらゆる理論を跳ね除ける強烈な理屈がこんなにも有難く感じるとは……。
直哉が虎杖と脹相の前に現れる中、虎杖悠仁の処刑人として『劇場版 呪術廻戦 0』(2022) 以来の再登場を果たしたのは乙骨憂太だ。虎杖は乙骨憂太の登場にあたって、五条先生のような、けれどもっと不気味な空気を感じ取っていた。これは後述する乙骨の呪力量に由来するものだろう。そうして、アニメ『呪術廻戦』第3期1話&2話では、虎杖&脹相、乙骨、そして直哉の4人がメインプレイヤーになる。
一方の虎杖悠仁と乙骨憂太も戦いを繰り広げる。この戦いでは虎杖は五条悟や東堂からの教えを思い出しながら特級術師を相手にする。原作漫画では文字だけだったナナミンの「後は頼みます」がビジュアル付きで描かれるアニメオリジナルの演出がまた泣ける。虎杖は東京で呪霊を相手にして、脹相が「鬼神」と呼ぶほどの成長を遂げていた。一方の乙骨も、『呪術廻戦 0』の時とは比べ物にならないほどに力をつけている。
五条悟と乙骨憂太は同じ特級術師だが、「死滅回游」ではようやく二人の違いについて解説が入る。緻密な呪力操作を可能にする六眼を持つ五条悟は、術式を発動した時に呪力のロスがほとんどなく、呪力切れが生じないという。一方、乙骨憂太には呪力切れがあるものの、五条悟を超える膨大な呪力量を持っている。
虎杖 vs 乙骨は、乙骨やや有利の展開を見せるが、最後はリカちゃんが虎杖を押さえ、乙骨が虎杖の心臓を刀で貫いたのだった。アニメ『呪術廻戦』第3期第1話/48話がここで幕を下ろすのは、かつて虎杖が主人公ながら死んだことがあることを踏まえると、とても「らしい」展開だ。
アニメ『呪術廻戦』第3期2話/49話ネタバレ感想&解説
圧巻の直哉 vs 脹相
アニメ『呪術廻戦』第3期2話/第49話「もう一度」の冒頭では、車椅子に座った人物から離れていく何者かの姿が描かれる。車椅子の人物に付き添っているのは髪型から考えて呪術高専の補助監督である新田明だと思われる。
そして乙骨が虎杖を刺して「ごめんね、虎杖君」と言った後に両面宿儺が映るのだが、これは原作通りの展開でありつつ、宿儺の雰囲気がずいぶん違っていて、かっこよくなっている。主人公が死んでもおかしくはない『呪術廻戦』だが、今回は乙骨の作戦である。宿儺もおそらくそれを察知していたものと考えられる。
一方、直哉 vs 脹相の戦いは圧巻。直哉は直毘人と同じく、1秒間を24分割したイメージを頭の中で作り、その動きをトレースできる「投射呪法」を操る。これも禪院家相伝の術式だが、直毘人は自身もその使い手であったがゆえに、直哉の器に限界を感じ、恵を当主に指名したのかもしれない。
直哉と脹相のトンネル内での高速バトルでは、直哉がどんどんぐにゃんぐにゃんになっていく。このバトルは原作漫画の演出を大幅に引き伸ばしたアニメオリジナルの展開で、第3期も引き続きハイクオリティーで斬新なバトルシーンが用意されていることが約束されたようなものだ。
脹相は、「お兄ちゃん」の自分は弟たちが後に続けるように(または失敗を避けられるように)、何度間違えても弟の前を歩まなければならず、ゆえに自分は強いのだという“お兄ちゃん論”を展開。「兄が弱いおかげでお前が強かったらどうする」と直哉を完全論破すると、脹相のオリジナル技である「超新星」(百斂を破裂させて血を飛ばす技)で勝利を収めるのだった。
直哉は脹相が加茂家相伝の術式である赤血操術の使い手であることから、自分の知っている能力だとたかを括っていたところがある。実際には脹相は人間と呪霊の混血で呪力を血液に変換できるため赤血操術の弱点である失血死の心配がなく、150年生きていることから加茂家の人間が使えないような技も使うことができた。最強クラスの術師ではある直哉が負けた背景には、直哉の驕りがあったと言える。
虎杖香織は…
意識を失った虎杖悠仁の記憶の中で、祖父の倭助、父の仁が登場。そして、母の香織が姿を見せるのだが、その額には加茂憲倫と同じ縫い目があった。
脹相は自分の弟だと確信した虎杖悠仁に「父の額に縫い目がなかったか」と聞いていたが、縫い目があったのは母の方だった。つまり、加茂憲倫や偽夏油の身体を乗っ取っていた存在は、約15年前に虎杖香織の母の身体を乗っ取り、虎杖悠仁を産んでいたのである。
漫画未読勢には驚きの展開だが、漫画既読勢にとっても驚きだったのは、虎杖香織の声が林原めぐみであったことだ。これで『呪術廻戦』では、「エヴァンゲリオン」シリーズからシンジ役の緒方恵美が乙骨憂太役、綾波レイ役の林原めぐみが虎杖香織役を演じることになった。
乙骨は脹相に敗れた直哉を反転術式で治す代わりに、総監部に虎杖の死を報告するよう告げると、その後、虎杖は乙骨の前で目を覚ます。乙骨憂太は虎杖を一旦殺した上で、反転術式を使って復活させたのだ。
乙骨憂太は虎杖悠仁の処刑人になる代わりに虎杖悠仁を殺すという縛りを総監部と設けており、それを遂行する必要があった。自分が処刑人になることで他の人間が虎杖を本当に殺してしまうことを阻止したのである。
そしてこの作戦は、元はと言えば五条悟が仕込んだものだった。虎杖にとっては今回が2回目の偽装死であることに触れられているが、一度目はアニメ第1期で虎杖が宿儺から恵を守るために自ら死を選んだ時のことだ。虎杖は宿儺と縛りを結んで復活したが、五条悟の保護下でしばらく死を偽装していた。
その間に五条悟は海外に出向いて乙骨憂太に会いに行っている。そのシーンは『呪術廻戦 0』のポストクレジットシーンで少しだけ描かれていたが、アニメ第3期ではその続きが描かれた。五条悟はもし自分に何かあった時には、特に虎杖悠仁を気にかけてやってほしいと乙骨憂太に依頼していたのである。
この五条悟から乙骨憂太への“頼み”は、ナナミンから虎杖悠仁への「後は頼みました」を彷彿とさせる。五条悟は死んでいないが、呪術師たちは“後を託す”、“後を託される”という営みを繰り返してきたのだ。
死滅回游へ
だから、ここで虎杖の前に現れた恵は、一人で(脹相と)戦っていた虎杖に対して、渋谷事変で人々が死んだのは「俺たちのせいだ」と語りかける。それでも虎杖の心の内にあった不安は、宿儺を内側に宿している自分が一緒にいる限り、恵を苦しめることになるという事実からくるものだった。
そんな虎杖の心を動かしたのは、恵の「俺を助けろ」という“頼み”だった。ただ闇雲に人を助けるだけじゃなく、隣にいる恵を助けたいのなら力を貸してくれという呼びかけで、ついに虎杖は前を向くことになる。
恵が助けを求めたのは、加茂憲倫が始めた呪術を与えられた者たちの殺し合い、「死滅回游」に姉の津美紀が巻き込まれていたからだった。津美紀は呪いにあてられて長らく意識不明だったが、死滅回游の開幕と共に意識が戻っている。
アニメ『呪術廻戦』第3期2話の冒頭で津美紀と思われる車椅子の人物から遠ざかっていった人物は恵だったのだろう。他にも弁護士バッジをつけた人物や屋上でタバコを吸う人物など、死滅回游に巻き込まれた人々の姿も映し出されている。
そして死滅回游のルールが足早に紹介されるが、普通に読めないスピードだ。大事な点は、結界(コロニー)に侵入した者は游者(プレイヤー)となり、游者は他の游者を殺すことでポイントを得られる、100得点を消費することでルールを追加できるというものである。なお、死滅回游のルールは完全に把握していなくてもついていけるのでご安心を。
津美紀を含む、無為転変で覚醒させられた1000人の術師が強制的に参加させられ、殺し合いを強いられるゲームが死滅回游だ。恵はこれを「呪術テロ」と呼んでいる。虎杖、恵、乙骨は、まず五条悟が封印されている獄門疆の開き方と加茂憲倫の目的を探るために、呪術界の要である天元に会いにいくことになる。
ラストの意味は?
アニメ『呪術廻戦』第3期2話/49話のラストでは、虎杖は宿儺に次に乗っ取られたら自分を殺すよう乙骨に依頼した上で、虎杖、恵、乙骨、脹相が九十九と真希に合流。真希は直毘人と同じく渋谷事変で漏瑚に焼かれていたが、甚爾と同じく「天与呪縛のフィジカルギフテッド」であったことから、呪力ではなく肉体の強さで生き残っていた。甚爾の例を踏まえると、フィジカルギフテッドもまた禪院家の相伝ではないかとも思えてくる。
一同は、忌庫の呪胎九相図の気配を感じとれる脹相の案内で案内で結界内に隠れている天元のもとへと近づくことに。ここで虎杖悠仁が(おそらくめんどくさくなって)脹相のことを「兄貴」とみんなに紹介するシーンが笑える。脹相がやっと虎杖の「お兄ちゃん」として認めてもらった瞬間だ。
中に入ると床に血痕が見られるのは、「懐玉・玉折」編で描かれた甚爾による天内理子殺しの痕跡だ。そしてあの時は目に触れない存在のまま終わった天元が、真っ白な空間に登場する。
それぞれを「禪院の子」「道真の子」「呪胎九相図」「宿儺の器」と肩書きで呼んでいくが、「道真の子」というのは菅原道真の子孫である乙骨憂太のことだ。ちなみに菅原道真は五条家の先祖でもあり、五条悟と乙骨憂太は遠い親戚であることが明かされている。
①死滅回游における加茂憲倫の目的、②五条悟の封印解除の鍵を握る天元が登場し、アニメ『呪術廻戦』第3期2話/49話は幕を閉じる。なお、天元の声を演じるのは『呪術廻戦』のナレーションも担当している榊原良子だ。
『呪術廻戦』第3期 死滅回游編 前編のエンディングテーマはjo0ji「よあけのうた」。まだ青春色の残っていた第2期から一転して、第3期はオープニングと合わせて大人っぽい雰囲気の楽曲が起用された印象だ。そして物語は、第3期3話/通算50話「死滅回游について」へと続いていく。
アニメ『呪術廻戦』第3期は2026年1月8日(木) より、毎週木曜深夜00:26~、MBS/TBS 系列全国28局にて放送。配信先は公式サイトで。
『呪術廻戦』第3期1話&2話の続きは原作漫画の17巻途中から描かれる。
岩崎優次が『呪術廻戦』のその後を描いたスピンオフ『呪術廻戦≡(モジュロ)』はコミック第1巻が2026年1月5日より発売中。
漫画『呪術廻戦』最終巻の第30巻は発売中。
アニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」編のBlu-rayは発売中。
アニメ『呪術廻戦』 懐玉・玉折/渋谷事変 公式ガイドブックは発売中。
『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』追加映像/新規カットの解説はこちらから。
『呪術廻戦』第2期最終回の解説&感想はこちらから。
