ネタバレ解説&考察『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話「ブラックパンサー」の世界観を拡張する物語 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話「ブラックパンサー」の世界観を拡張する物語

©︎MARVEL

『アイズ・オブ・ワカンダ』配信開始

MCUアニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』は、「ブラックパンサー」シリーズに登場したワカンダ王国の戦士たちの歴史を描く作品。2025年8月27日の配信開始が発表されていたが、米時間7月24日に急遽8月1日(金) に前倒しで配信を開始することが明かされた。ほぼ1ヶ月の前倒しということで心の準備ができていなかった方もいるだろう。

今回は、全4話が一斉配信されたアニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』より、第1話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話ネタバレ解説

舞台は紀元前1260年

アニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話「ライオンの根城へ」のオープニング映像では、アイアンフィストと思われる影も登場。古の戦いから車両にビル群も登場し、ワカンダの知られざる歴史が描かれることが示唆されている。

『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話冒頭の舞台となるのは紀元前1260年のクレタ島だ。現代のMCUの舞台から約3290年前、MCUでは最も過去の時代を描くことになる。なお、クレタは1941年に「キャプテン・アメリカ」のコミックで初めて登場した場所で、ゼウスが生まれた場所とされている。

クレタ島に現れたのはライオンの船首をつけた海賊たち。それを率いるのはライオンの仮面をつけた人物だ。ブラックパンサーを思わせる紫の光を放っている。ライオンの海賊にさらわれた人々は新たな人生を受け入れるよう迫られ拷問を受けるのだが、この中で一人の女性が「私は誰にも仕えない」と反発する。このセリフは、英語では「Master」という言葉が使われており、「奴隷主」を想起させるダブルミーニングとなっている。

そして舞台は6週間前のワカンダに。過去にドーラ・ミラージュを追放されたマーチャント族のノニは、ライオン追跡の命を受ける。元ドーラ・ミラージュという設定は映画「ブラックパンサー」シリーズのナキアを思い出す設定だ。ナキアは国外でワカンダのスパイ組織ウォー・ドッグの一員として活動していた。

親衛隊長アキヤによると、かつての王室護衛隊長であるンカティが失踪したという。ンカティは「ライオン」と呼ばれており、兵器を大量に製造できるテクノロジーを持ち出していた。この説明する際にはホログラムのような技術が使用されており、ワカンダは紀元前1260年の時点で高度な技術を持っていたことが示されている。

マーチャント族にスポットライト

そうして捕まることでライオンの船に潜入したノニは、捕えられた人々が奴隷化されていく様子を目の当たりにする。兵士は「毎日の衣服と食事があれば王を愛するようになる」と話し、女性の捕虜は「笑顔を見せろ」と強要される。「教育」と言いながら女性たちを奴隷にしている様子を見てついにノニは身を潜めることを止めて戦いに臨む。

一方で、それまでのノニの潜入活動はまさにスパイそのもので、ウォー・ドッグのルーツを感じさせる。傷を負いながらも次々と幹部を倒してライオンの元に辿り着いたノニは、ライオンからワカンダには多くの秘密があると知らされる。これも映画『ブラックパンサー』(2018) でティ・チャラが“父の罪”と直面した展開を想起させる。

ちなみにこのシーンでは、ライオンことンカティもノニと同じくマーチャント族の出身であることが明かされている。ワカンダには王族であるゴールデン族の他に、ジャバリ族、ボーダー族、マーチャント族、マイニング族、リバー族の五つの部族がある。

ホワイトゴリラ神を信仰するジャバリ族は現ワカンダ国王のエムバクが、国境を守るボーダー族にはウカビが、川を仕切るリバー族にはナキアが属していたが、ヴィブラニウムを採掘するマイニング族、商人の部族であるマーチャント族からはメインキャラが登場していなかった。『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話では、主人公のノニとヴィランのライオンが紫をテーマカラーとするマーチャント族出身のキャラとして描かれることになった。

ウォー・ドッグの歴史

ライオンはかつて国の力を守るために外の世界に送り込まれたといい、工作員は「ハトゥットゥ・ザラゼ」と呼ばれたと明かす。これはワカンダのスパイ組織「ウォー・ドッグ」のワカンダ語での発音だ。

ライオンはウォー・ドッグが王国の知られたくない任務を遂行していると明かす。ライオンもかつてノニと同じように外の世界に派遣されたといい、ノニに自由になれと誘惑する。だが、ノニはそれならなぜ多くの鎖を作っているのかと疑問を抱く。『アイズ・オブ・ワカンダ』の制作に携わったアメリカ黒人達にとっては鎖(chain)は奴隷制の象徴だ。アフリカ大陸から奴隷船でアメリカ大陸へ運ばれる際に鎖で繋がれた歴史があるからである。

現在の犠牲の先に、一つの旗の下に自由を謳歌する未来が待っていると嘯くライオンだったが、ノニはそれを「幻想に過ぎない」と拒否。世界は国家単位で成立するというのが、本来のナショナリストの考え方だ。

ここからのライオン vs ノニの戦いは圧巻。衝撃を吸収して放出するヴィブラニウムを使用したと思われるライオンの多彩な武器と、ノニの高い戦闘力がぶつかり合う。天井から吊るされた布に掴まってダンスを舞うエアリアルティシューを思わせるシーンもあり、魅力的なアクションシーンに仕上がっている。

ちなみにライオン/ンカティの声を演じるのはクレス・ウィリアムズで、DC作品ではドラマ『ブラックライトニング』(2018-2021) で主演を務めた。また、アニメ映画では「スーパーマン」シリーズのジョン・ヘンリー・アイアンズ/スティールの声を担当している。

ノニは右目を失いながらも、最後にはライオンのマントを使ってエネルギーの放出を跳ね返して勝負あり。だが、ライオンは決してワカンダには帰らないと宣言して自爆。ノニはライオンのマスクは回収したものの、ヴィブラニウムは海底へと沈んでいったのだった。

ノニはワカンダへの脅威を排除した功績でドーラ・ミラージュへの復帰が認められる。元々命令を聞いて集団行動をすることができず追放されたノニだったが、ここでもやはり定められた道を歩けないとしてドーラ・ミラージュへの復帰を拒む。だが、その代わりにノニはウォー・ドッグとして活動することを希望するのだった。

アキヤによると、ウォー・ドッグとして活動する人物には自発的な意思が必要であり、今回の任務は実はテストだったという。ノニは、外の世界に残るヴィブラニウムを回収し、ワカンダにとっての脅威を取り除くためにウォー・ドッグとして活動することを誓い、『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話は幕を閉じている。

『アイズ・オブ・ワカンダ』第1話ネタバレ感想&考察

アニメーションならではの作品に

アニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』は美麗なアニメーションとそれに伴うクールなアクションシーン、重厚な音楽とメッセージ性の強いストーリーが揃ったなんとも贅沢な作品だ。2025年6月から7月にかけて配信されたドラマ『アイアンハート』に続きライアン・クーグラーが製作総指揮を務めているが、作品を牽引するショーランナーは長らくMCU作品のストーリーボードを手掛けてきたトッド・ハリスだ。

『アイズ・オブ・ワカンダ』のショーランナーを務めるトッド・ハリスは、『ブラックパンサー』や『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー』(2022) にも参加している。 20世紀フォックスの作品でも、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)、『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)、『デッドプール2』(2018) といった作品でストーリーボードを手掛けてきた。

アニメーションの強みを最大限に活かし、美麗な映像によって異なる時代を描く野心的な試みは、今のところ成功していると言っていいだろう。

拡張する「ブラックパンサー」の世界観

加えて『アイズ・オブ・ワカンダ』の面白いところは、歴史を描くことによって、実写版の「ブラックパンサー」シリーズに登場したキャラクター達が背負うものの重みが増すという点だ。例えば第1話ではドーラ・ミラージュの隊長アキヤが登場したが、後の隊長であるオコエは、アキヤら先代の隊長達の名誉も背負って戦ってきたのだろう。

ウォー・ドッグのルールが明かされたことで、ナキアもまた自身で志願してドーラ・ミラージュからウォー・ドッグに転身したという背景も見えてくる。海外に流出したヴィブラニウムを回収するという役目も伝統的に重要な役割の一つなのだ。

一方で、ライオンのように外に開いていくこと、自由になることを志す勢力はいつの時代のワカンダにも存在していたことが示唆されている。後にキルモンガーは国王の座を奪って国を開こうとしたが、ワカンダの歴史はその繰り返しだったのかもしれない。

だが、ティ・チャラの王政が特別だったのは、キルモンガーのような存在の声にも耳を傾けて国を開くことを決めたからだ。異端を排除し、抹消してきたワカンダの歴史を変えたのがティ・チャラだったのである。

このように、『アイズ・オブ・ワカンダ』の第1話を観るだけでも「ブラックパンサー」シリーズの世界観が大きく広がる作品だった。第2話以降はどんな歴史が描かれるのか、引き続き観ていこう。

アニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』は全4話が2025年8月1日(金)よりディズニープラスで独占配信中。

『アイズ・オブ・ワカンダ』配信ページ

『アイズ・オブ・ワカンダ』のビジュアル開発とキャラクター・デザインのヘッドも務めているライアン・メイナーディングの軌跡と、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』までのMCUの歴史を500点以上のイラストと共に振り返る『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』は発売中。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』はBlu-rayが発売中。

【ネタバレ注意】『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』ラストの解説&考察はこちらから。

ケヴィン・ファイギが明かした『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に登場する5大勢力にはワカンダも含まれている。詳しくはこちらの記事で。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストの解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『アイアンハート』第1話の解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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