ネタバレあり!『万事快調〈オール・グリーンズ〉』児山隆監督が語った、映画オリジナル要素の意図とあのラップの意味 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレあり!『万事快調〈オール・グリーンズ〉』児山隆監督が語った、映画オリジナル要素の意図とあのラップの意味

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』児山隆監督に【ネタバレあり】でインタビュー

第28回松本清張賞を満場一致で受賞した波木銅の同名小説を映画化した『万事快調〈オール・グリーンズ〉』が、1月16日(金)より全国公開中。『猿楽町で会いましょう』(2019) の児山隆監督が指揮した本作は、主人公・朴秀美(ぼく・ひでみ)役を南沙良、もう一人の主人公・矢口美流紅役を出口夏希、二人と共に「オール・グリーンズ」という同好会を結成する岩隈真子(いわくま・まこ)役を吉田美月喜が演じ、主題歌をNIKO NIKO TAN TAN、劇中のラップ指導を壮子itが担当。「不適切で爽快な青春映画」として話題を呼んでいる。

今回バゴプラでは、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』を手がけた児山隆監督に、本編のネタバレありで話を聞いた。原作にはなかった映画オリジナルの要素に込められた意図や、あのラップシーンのリリックの意味、撮影の舞台裏について伺った。以下の内容は本作の内容に関するネタバレを含むので、ぜひ劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。


インタビュー・構成:齋藤隼飛

──私は映画を見てから原作を読んだのですが、改めて映画の構成が見事だと思いました。カッコいいアダプテーション(翻案)というか。原作の半分にあたる内容を映画では45分ほどでまとめて、ようやくタイトルバックが出るという構成が印象的でした。

児山隆監督(以下、児山監督):ありがとうございます。嬉しいです。原作小説はあの歪さというか、読んでいて「どうやって終わるんだろう」という感覚があって、でも最終的に気持ちよく終わる、そこが面白かったりするんです。本で読んだ時の気持ち良さ、面白さというのがあるのですが、それをそのまま映画でやると、「なんで?」みたいになってしまう可能性がある。なので、原作で起きる事象を整理しつつ、映画として自然な起承転結――三幕構成に近いかもしれません――の構造に落とし込む、ということをやっていきました。

──第38回東京国際映画祭での上映時には、観客の方からもタイトルバックの出し方について称賛の声がありました。こだわりの演出だったのでしょうか。

児山監督:美流紅があそこで「これは私たちにとっての第二部だ」ということを言うんですが、映画としても第二部の始まりであり、けれど彼女たちの物語としてはあそこが本当の幕開けでもある。なので、「第二部の始まりであり、同時に物語のオープニングでもある」と思いながら作っていました。

──原作小説が群像劇的な構成であるのに対し、映画では一貫して朴秀美を語り手にしていますよね。それは早い段階で決めていたことなのでしょうか。

児山監督:原作を最初に読んで、それからもう一度読んで、その時点で決めました。原作には複数人の視点で語られる面白さがあると思います。個人的にはそこがむちゃくちゃ面白いなと思ったところでもあります。1話28分で全8話みたいなテレビドラマのフォーマットだと、あの構成で良い気がするんです。このエピソードは美流紅の回、今回は藤木、今回は村上、武智、朴の弟の回、それで最後にあの場面、というのはとても正しそうだし、良さそうですよね。

ただ、映画でそれをやるのは難しい。事象を整理して、集約して、群像劇みたいにするのが良いのか、とかも考えたんですが、何か違う気がしました。それで一度、朴秀美に視点を集約してみようと。そこから三人の物語へ展開していく。その形が、映画にする上で一番しっくりきたんです。

──監督の前作『猿楽町で会いましょう』の主演俳優である金子大地さんが、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』では佐藤という印象的な悪役で出演されていますね。

児山監督:南さんもそうだし、キャストの皆さんそうなんですが、できるだけ、これまであまりやってこなかった役をやっていただきたいと思っています。金子くんは一緒に作品を作ったことがありますが、他の皆さんも過去作を拝見して、過去にやっとことがない、新しいチャレンジになるようなキャラクターを演じてもらえたら面白いなと。キャスティングは全部が思い通りにいくわけではありませんが、「これは本人もやりたいと思ってたんじゃないか?」と勝手に想像しながらオファーするというのがワクワクするんです。

──これまでの児山監督作品との違いを挙げると、今回は映画館、ボーリング場、終盤のバスの車内など、ロケーションの多い作品でした。ご自身ではスケールアップしたという感覚はありますか。

児山監督:スケールアップはしたと思います。ただ、予算は増えたとはいえ、現場の各部署、プロデューサーの皆さんもそうだし、皆が本当に頑張ってくれた結果だと思っています。スケールアップはしたとはいえ、照明、衣装、美術、録音など、すべてのスタッフの努力があって成立したものであって、そこは手放しに喜ぶのではなく、もっと大きい予算でやらなければなっていう思いはあります。

──クレジットを見ると、インティマシーコーディネーターや×××監修、ラップ監修など、各種の監修がたくさん入っていることに気がつきました。

児山監督:センシティブなシーンもあるのでインティマシーコーディネーターに入っていただこう、というのは皆で話し合って決めました。極力、皆さんが気持ちよく現場に臨めるようにしましょう、ということで。×××の描写についても、自分が経験していないことだし、これからも経験しないと思うし、分からないことなので、学術的にそういうことに詳しい専門の方にご指導いただきました。

ラップ指導については、今回の作品の内容的に荘子itさんだったら直感的に絶対面白いものになるなっていう予感がありました。個人的には荘子itさんの佇まいと朴秀美の雰囲気が重なっていた部分がちょっとあって。それもあって荘子itさんがいいなと思いました。

──最後の朴秀美のラップシーンは痺れました。私もかつてラップをやっていて。

児山監督:そうなんですか!?

──大阪で豊中サイファーとかに参加していて、梅田サイファーも2回くらい行きました(笑)。朴秀美の最後のラップの「雨にも負けず~」のリリックはTHA BLUE HERBの「Ame Ni Mo Makez」からの引用だなと思ったのと、「チャリパクって盗む太陽」っていう『太陽を盗んだ男』にかけたラインも痺れました。

児山監督:ありがとうございます。あのシーンのリリックは荘子itさんとの共作です。

──背景を伺うと改めて映画を観返したくなりました。たくさんお話を聞かせていただいて、ありがとうございました!

児山監督:いえいえ、楽しかったです!

児山隆監督作品『万事快調〈オール・グリーンズ〉』は全国公開中。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』公式

波木銅による原作『万事快調〈オール・グリーンズ〉』は文春文庫より発売中。

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映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』の見どころや原作実写化の裏側について児山隆監督に聞いたインタビューはこちらから。

【作品概要】
◎タイトル:『万事快調<オール・グリーンズ>』
◎原作:波木銅「万事快調<オール・グリーンズ>」(文春文庫)
◎監督・脚本・編集:児山隆
◎出演:南沙良 出口夏希 / 吉田美月喜 羽村仁成 黒崎煌代 / テイ龍進 松岡依都美 安藤裕子 / 金子大地
◎主題歌:NIKO NIKO TAN TAN 「Stranger」 (ビクターエンタテインメント/Getting Better)
◎公開:2026年
◎配給:カルチュア・パブリッシャーズ
◎コピーライト:©2026「万事快調」製作委員会
■公式サイト https://www.culture-pub.jp/allgreens/
■インスタ https://www.instagram.com/allgreens_movie/
■X https://x.com/allgreens_movie

東京国際映画祭で実施された児山隆監督の舞台挨拶の模様はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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