ネタバレ解説&感想『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ジャック・スパロウとは? 裏切りと取引について考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ジャック・スパロウとは? 裏切りと取引について考察

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海賊の黄金時代を描いた人気シリーズ

ジョニー・デップが18世紀のロックスター風の海賊、“キャプテン”ジャック・スパロウを演じ、海賊たちとその伝説の戦いを描いた「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ。今もなお、新作が企画されている同シリーズの記念すべき第1作が『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)だ。

史実と超自然的な存在を織り交ぜ、植民地支配を推し進めていたヨーロッパの大航海時代に、政府と対立し、自由に生きるアウトローたちの海賊は魅力的だ。本記事では、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』で語られる海賊像を通し、シリーズの人気の理由を考察していこう。

なお、以下の内容は『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』の内容に関するネタバレを含みます。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ネタバレ解説&考察

海賊の黄金時代とは?

ポルトガルとスペインが海の覇権を奪い合った大航海時代。その激化っぷりは凄まじく、ヨーロッパ各国が世界各地に植民地をつくり、ローマ教皇が「世界の半分をポルトガルに、もう半分をスペインに」というとんでもない条約まで結ばせたほどだった。

しかし、航海技術の発達は思わぬ問題を生んだ。それはヨーロッパに運び込まれる商船が増えたことにより、それを狙う海賊たちが増加したのである。『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』の舞台となる18世紀はスペイン継承戦争により、多くのイギリスの水兵や彼らに雇われていた私掠船たちが海賊に転じた時代である。

特にジャック・スパロウたちと敵対するイギリス海軍の存在は大きく、イギリス海軍はそれまで訓練と経験を積ませた水兵を多く輩出したのにも関わらず、軍縮に伴い職を失ったことで海賊に宗旨替えした者が少なくなかった。そこに当時の迷信深い船乗りたちの伝承を組み合わせた物語が「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなのである。

“キャプテン”ジャック・スパロウとの出会い

カリブ海の港町ポート・ロイヤル。現在のジャマイカの首都キングストンの沖合にあるポート・ロイヤルは、スペインとイングランドとの小戦争を経てイングランドが奪取した入植地であるため、人種のるつぼとなっている。さらに、17世紀頃にはスペインの商船を襲う私掠船の海賊たちバッカニアの活動拠点でもあり、多くの海賊たちも出入りしていた。

ポート・ロイヤルを治める総督の娘であるエリザベス・スワンは、海軍提督ジェームズ・ノリントンとの結婚を控えていたが、本当は幼馴染の鍛冶屋のウィル・ターナーからの告白を待っていた。ここで象徴的なのが、エリザベス・スワンがコルセットに苦言を呈するシーンだ。彼女はコルセットが原因で呼吸困難に陥るが、ジャック・スパロウはコルセットを切って命を救う。

ここでのコルセットは女性の抑圧の象徴だと考察できる。事実、19世紀末から20世紀にかけてココ・シャネルたち女性デザイナーは、コルセットによる女性への抑圧を憂い、ファッション界に革命を起こした。そして、現在の韓国では社会的な女性らしさからの解放運動を「脱コルセット」と呼んでいる。

コルセットによって抑圧され、家柄を理由に本当に愛する人物と結ばれないエリザベスに対して、ジャック・スパロウは自由を体現した存在として現れる。彼の腕には東インド会社との戦いの跡が残されている。東インド会社の実態は、イギリスの植民地統治機関であり、ジャック・スパロウは支配を嫌う自由の象徴だと考察できる。

ヘクター・バルボッサとブラック・パール号

ポート・ロイヤルを襲い、エリザベス・スワンを誘拐した海賊、“キャプテン”ヘクター・バルボッサ。彼は『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のメインヴィランであり、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのもう一人の主人公とも言える最強の海賊の一人だ。

9人いる伝説の海賊の一人で、カスピ海の王として名の知れたヘクター・バルボッサが乗る船こそ、“キャプテン”ジャック・スパロウが探し求めている史上最速のブラック・パール号だ。その最大の特徴は名前の由来にもなっている真っ黒の船体と帆である。所属を示す帆など黒く塗りつぶして夜襲に特化するなど、この船もまた反政府の象徴的だ。

今ほど照明技術も優れていない18世紀では、夜襲は海賊の得意戦術だった。例えば海賊が眼帯をしていた理由は単純に目を患ったからではなく、片目を暗闇に慣らしておくことで、照明が消えた瞬間にすぐに相手を制圧できるようにしておくためだったとも言われている。事実、ブラック・パール号の真っ暗闇の海からの砲撃にポート・ロイヤルの砦は対応できないなど、ヘクター・バルボッサは闇を操ることに長けた海賊だと言える。

トルトゥーガ島

ジャック・スパロウとウィル・ターナーが船員集めのために訪れたトルトゥーガ島は実在の島であり、史実でも海賊たちの溜まり場だった。1625年にイギリスとフランスの海賊たちが入植し、その後はスペインの航路を抑えるため私掠船の海賊たち、バッカニアの溜まり場となった。

さらには黒人奴隷たちを運ぶ船も寄るようになり、トルトゥーガ島はポート・ロイヤル以上の人種のるつぼになったのである。しかし、経済の中心が海賊たちを商売相手にした歓楽街ばかりだったため、世界の掃きだめと呼ばれることになる。

なお、スペイン海軍は海賊たちを一網打尽にしようと何度か軍艦を派遣しているが、すぐに奪い返された。このあたりのならず者たちの結束力は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの海賊会議などにも通じるものがある。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ラストネタバレ解説&考察

アステカの金貨

ヘクター・バルボッサたちブラック・パール号が各地の港町を襲撃していた理由。それはかつて奪った金貨を回収するためだった。16世紀、スペインは南米を侵略し、略奪の限りを尽くした。豊かな金脈と高い金属加工技術を持っていたアステカの人々は虐殺を止めるため、金貨を差し出した。

その金貨はスペインの財宝として保管されていたが、その運搬中、ヘクター・バルボッサたちブラック・パール号の船員たちが略奪してしまう。しかし、アステカの金貨には呪いがかけられていた。永遠の飢えと不老不死をもたらす呪いから解放されるためには、すべての金貨を集めて盗んだ人間の血を注ぐしかない。

自由の象徴である海賊たちが植民地政策をしていた政府に加担した結果、永遠に自由を奪われる。アステカの金貨――征服者コルテスの呪われし宝とは、海賊が自由よりも目先の利益を求めて本質を忘れたことを意味していると考察できる。

船乗りたちを縛る“取引”

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズにおいて、重要な意味を持つのが“取引”である。自然の驚異に晒されていた船乗りたちは迷信深いものが多く、その中でも“取引”は重要な意味を持っていた。特に裏切りが日常茶飯事だった海賊たちだったからこそ、“取引”という掟を破らないことは大きな意味を持っていたのだ。

“キャプテン”ジャック・スパロウはウィル・ターナーと「エリザベス・スワンを救う」という取引を結んでいる。彼女を誘拐したヘクター・バルボッサはアステカの金貨にかけられていた呪いという取引を破った結果、呪われた肉体になってしまった。

そして、ジャック・スパロウがキャプテンという称号とブラック・パール号に執着するのも取引が関係している。その取引内容は続編『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)で明かされ、ジャック・スパロウは最速の船と船長の座を手に入れるため、海の悪霊であるデイヴィ・ジョーンズと「血の契約」を結んでいた。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでは、荒くれ者の悪だからこそ、“取引”を重んじる誠実さを重視していることが描かれており、それを破った者には何かしらの罰が与えられる。また、ヘクター・バルボッサは取引内容の裏をかくことを得意とし、靴紐のビルは“取引”を破ったことを非難するなど、奇妙な話だが、裏切りが当たり前だからこそ、“取引”においては誠実さを求めていたのだ。

裏切り者の戦い

“キャプテン”ジャック・スパロウはウィル・ターナーが靴紐のビルの息子だと最初から知っており、彼を使って取引をするつもりだった。そして、エリザベス・スワンがウィル・ターナー救助のために動かしたジェームズ・ノリントン提督の船へと、不死身の海賊たちをけしかけたのである。

呪いが解けずに不死身である間に水兵を皆殺しにするべきというジャック・スパロウ。しかし、それはヘクター・バルボッサへの復讐のために仕掛けた壮大な裏切りだった。彼の目的はただ一つ。ヘクター・バルボッサの部下が出払い、水兵と戦っている間に呪いを解くことで全員殺してしまおうという算段だった。

ジャック・スパロウとヘクター・バルボッサのキャプテン同士の戦いは、すべてが裏切りによって成り立っている知略戦だ。ジャック・スパロウは戦いの最中、敢えてアステカの金貨を盗むことで不死身となり、彼の部下たちは船長を見捨ててブラック・パール号で逃げる。そして、一度裏切られたウィル・ターナーとエリザベス・スワンもジャック・スパロウを助けるべきか決めあぐねるのだった。

しかし、最後の戦いの決着をつけたのは、ジャック・スパロウが本当に恐れるべきと言っていた善人だった。靴紐のビルは海賊にも関わらず船長への裏切りを非難する善人だ。その息子のウィル・ターナーが善意と愛で行動し、土壇場で見計らって呪いを解くことで、最後、ヘクター・バルボッサを倒した。

その一方で、ウィル・ターナーは最初こそ嫌っていた略奪と裏切りを信条とする海賊の息子である。彼はジャック・スパロウの処刑を食い止め、エリザベス・スワンとの結婚を認めさせた。ウィル・ターナーは善人であり、裏切り者で、ラストでは海賊となる。『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』は最後まで裏切り者同士の戦いであった。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』ラスト感想

自由を愛する無法者・海賊

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』で描かれる船乗りたちは、海軍に属する水兵や商船の船乗りたち合法の者と、海賊たち無法者にわけられる。主人公たち海賊が魅力的で、感情移入しやすいのは、彼らが自由を愛する存在というのもあるだろう。

水兵は白人男性しかおらず、黒人奴隷を連れている場面も存在している。それに対して、海賊たちはあらゆる人種がいる。理由は簡単。彼らは無法者なのだ。当時の人種ごとの区分などどうでもいい。大事なのは船を動かせるかどうかにある。

さらにジャック・スパロウは船乗りの迷信である女性を乗せると不幸が起きるということも気にしない。そのため、彼らが裏切り、道徳的に反した行動をしていても、どこか愛着心が湧くのだと考察できる。確かに海賊は悪党だ。それでも、覇権主義の時代において、すべての存在を受け入れるアウトローたちは魅力的な存在だったとも言える。

政府との対立と裏切り

また、海賊たちはイギリス海軍の水兵と衝突することもあるが、これは海賊が単に略奪者だからというわけではない。海賊たちには海軍出身者も少なくないのだ。例えば、ヘクター・バルボッサはスペインの船を襲ってアステカの金貨を奪ったと語っているが、国家同士の対立により、敵国の商船を襲うことが推奨されたこともあった。

そのため、海賊たちはあくまでも国が推奨しているので仕事で商船を襲っていると考えている者もおり、史実では敵国の商船を襲い過ぎた結果、母国から厄介者扱いされて自分のあずかり知らぬところで海賊になってしまったとされるキャプテン・キッドという海賊もいるほどだ。

つまり、裏切りが当たり前の海賊たちを、平然と裏切って使い捨てにしたのは政府側という歴史がある。そして、その政府は各地に植民地をつくるが統治は行き届いていない。だからこそ、海賊たちは植民地となっているトルトゥーガ島などで結束して暮らしているのだ。

そもそも、国家そのものがアフリカや南米などを相手に略奪をしていた時代だ。その国家の商船を襲う略奪者だった海賊たちを主人公にした「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズは、アウトローたちの仁義や掟をもとに、社会の鼻つまみ者なりの秩序を描いた作品だと言える。現在も第6作が企画されている人気シリーズの今後の展開に期待したい。

映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、5作セットのBlu-rayセットが発売中。

オリジナルサウンドトラックも発売中。

 

『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』キャスト&吹き替え声優まとめはこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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