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『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』海外の評価は?
2025年7月18日(金) より日本の劇場で公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、公開から60日で国内興収が330億円超を記録。『千と千尋の神隠し』(2001) を抜いて国内の歴代興収ランキングで第2位となる歴史的ヒット作となっている。
日本での興奮も冷めやらぬ中、9月12日には北米でも公開を迎えた。7月に開催されたポップカルチャーの祭典、サンディエゴ・コミコンでは最も大きなステージであるホールHで『鬼滅の刃』のパネルが開催され、監督やキャストが米国のファンの熱烈な歓迎を受けた。
サンディエゴ・コミコン
『#鬼滅の刃 無限城編』パネルにて竈門炭治郎役の花江夏樹さん
「必ず倒す、鬼舞辻無惨!!」#SDCC2025 pic.twitter.com/qaD3tnwiLq— バゴプラ|Kaguya Books (@vagopla) July 27, 2025
大きな注目を集める中、北米で公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は初週末3日間の興行収入で7,060万ドル(約104億円)を記録し、初登場全米1位を獲得した。北米でも興行的な成功を収めている本作だが、今回は、アメリカのメディアを中心に『鬼滅の刃 無限城編』への海外の反応と評価を見てみよう。
映画レビューサイトでは絶賛
映画レビューサイトのロッテントマトでは、50人の批評家から98%の高評価、1万人以上のオーディエンスからも98%の高評価を獲得している。批評家のナタリア・ウィンケルマンは、カジュアルなファンも「印象派のような背景の上で情熱的に感情を露わにするキャラクターを配置したビジュアル」のために一見の価値があると指摘。オースティン・バークは「感情が最大限に表現され、視覚的に退屈な瞬間は一切なく、音楽は壮大」と評価している。
オーディエンスからは「アニメシリーズを楽しんでいるならマストウォッチ」「ufotableは『無限城編』のアニメーションで自らを凌駕した」「美しい映画。涙腺が崩壊する。アニメーションは最高峰」「美しい。ただただ美しい」「漫画に完全に忠実で、その到達点を超える出来だった。サウンドトビジュアルが完璧」「戦闘シーンからバックストーリーまで全てが繋がっていく様子が本当に素晴らしい」と称賛の言葉が並んでいる。
批評家で5点中2.5点をつけたダニエル・カーランドは、「楽しめる要素は数多くある」としつつ、構成を念頭に「最大の問題は映画らしさがほとんど感じられないこと」とし、「詰め込みすぎでいて物足りない、フランチャイズの完結編が抱える象徴的な問題」があると指摘している。
構成への批判は?
米IGNのラファエル・モートメイヤーは『鬼滅の刃 無限城編 第一章』の構成に辛口の評価を下している。「『無限城編』は『無限列車編』での到達点から大きく後退した作品」とし、「無編集のコンピレーション映画のような印象を与え、エピソードを拙く繋ぎ合わせただけの構成、終わることのない回想が繰り返される」と酷評している。
一方で、「魅力的なキャラクター描写や美しい映像」は評価し、「おそらくシリーズ最高と言えるバックストーリーも確かに存在する」と認めている。また、「『無限城編』の最大の功績」として、「善逸がついに鬱陶しいではなくなり、魅力的でドラマティックなストーリーを得たこと」を挙げている。
猗窩座の物語は「本作のハイライト」とし、「鬼の魅力と人間の残酷さをこれまでで最も効果的に描き、かつ猗窩座の行いを正当化していない」と称賛している。アニメーションについては、「『鬼滅の刃』に期待される水準で、予算増による特別な向上は見られない」としつつ、それはむしろufotableのアニメーターおよびVFXアーティストが、アニメシリーズの時点で毎週のように映画級のスペクタクルを届けていることの証左だと評価した。
だがやはり、繰り返される回想シーンによってむしろ感情的な高揚が損なわれていると結論づける。回想がストーリーのペースを著しく鈍らせ、上映時間をより長く感じさせるとし、「長編映画にする意味を完全には正当化できない」としている。
新参者にはハードルも
米Varietyのピーター・デブルージは、大ヒットを記録しているNetflix発の韓国アニメ映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』とは「根本的に異なる」として、『鬼滅の刃 無限城編』はキャラクターやシリーズのルールを理解していなければ真価を知ることはできないと忠告。一方で「視覚的には『無限列車編』から大幅に進化している」と、無限城の背景デザインと色彩豊かな手描きのキャラクターの組み合わせを評価している。
本作の副題にもなった猗窩座をめぐる描写については、「『無限城編』ではほとんど30分を費やして猗窩座の過去を描く」とし、「彼がなぜこれほど怒りに満ちた鬼になったのかが明らかになる展開は、ファンが期待する戦闘シーンからは離れるが、作品にはさらなる深みを与えている」とした。
欠点としては、『ポケモン』のような初心者でも楽しめるアニメとは違い、“死”が頻出すること、単純な善悪の対立という構図から逸れるため誰を応援して良いのか分からなくなることから、やはりシリーズを未見の観客には高いハードルがあると指摘している。だが、作中の悲劇的な要素は、観客が戦いに感情移入するために「驚くほど効果的」と評価した。
童磨は「意外な見どころの一つ」
GamesRadar UKのブラッドリー・ラッセルは、「アメリカンコミックやゲーム原作の映画の不安定な興行成績が続く中で、アニメはハリウッドの次なる金のなる木になりつつある」と前置き。その上で、物語の構造は「保守的」で、「興行収入を追求するために、冷笑的に言えば6〜7話のアニメエピソードを無理に繋ぎ合わせた作品なのではないか」という懸念が拭いきれないとしている。
一方で、童磨を「『無限城編』における意外な見どころの一つ」として挙げており、「非常に不気味な存在感があり、武器として用いる二つの鋭利な扇子のおかげで、ufotableは無尽蔵な創造性を存分に発揮し、文字通り火花を散らす演出を繰り広げる余地が生まれた」としている。
回想シーンについては、「バックストーリーでヒーローの旅路やヴィランの動機を掘り下げる手法自体は、アニメでは珍しくないが、これほどまでに強烈で、シリーズを定義づけるものとなった例はかつてない。その手法から最大の恩恵を受けたのが猗窩座であり、一面的だった悪役を一瞬にして悲劇の人物へと変貌させた。これにより、ufotableが観客の心を揺さぶり、胸を打つ演出において最高水準にあることを証明した」と称賛した。
人気YouTuberの評価は
登録者数200万人超の映画レビューYouTuber クリス・スタックマンは、『鬼滅の刃 無限城編』のアニメーションについて「私たちは未来にいる」と、そのディテールや、活発で長尺な戦闘シーンを称賛。音響デザインについても「映画館で観る最大の理由の一つ」とした。
回想シーンについても、特にヴィランの過去が描かれた点については好意的で、「何がその人物を鬼に変え、なぜ人間としての人生が酷いものになったのかを知り、(鬼に)同情すら覚える」と解説。一方で、劇場には回想シーンが我慢できずにソワソワしていた客の姿もあったという。
また、「鬼滅の刃」の特徴として、キャラクターたちがナレーションを務める形で状況の説明が入ることを指摘。「それによって視聴者が混乱することを回避しているが、そのうちうんざりするかもしれない」としつつ、アニメならではの演出であり、今のところは「機能している」と結論づけている。
音楽への評価も
英ガーディアンのフーン・レーは、「強敵たちの背景を描く回想シーンの活用によって、物語の持続性に困難がもたらされている」「エモーショナルなインパクトに満ちているが、そうした回り道が時折戦闘シーンのテンポを損なう」としつつ、「戦闘シーンが本作の視覚的ハイライト」と評価している。
無限城のビジュアルについては「エッシャーの無限階段を想起させつつ、日本的な趣を帯びた優れたアニメーションのスペクタクル」とし、音楽についても「オーケストラから電子音まで駆使した鼓動を掻き立てる音楽は、命をかけた戦いの緊張感をさらに高める」と称賛している。
米RadioTimesのベン・ウィリアムスも『鬼滅の刃 無限城編』の音楽を称賛している。「高揚感は音響からも感じられ、梶浦由記と椎名豪による心地よい音景が、彼女らが今のアニメ界で最高の作曲家に含まれている理由を再確認させてくれる」と評価した。
また、「日本語・英語双方の吹替で声優陣による完璧な演技、Aimerの『太陽が昇らない世界』とLiSAの『残酷な夜に輝け』という新たな主題歌を中心とした魅力的な音楽によって、『鬼滅の刃の悲劇的な空気とシリーズの最終決戦における生々しい感情が見事に表現されている」と称賛している。
総じて、英語圏のメディアでは、回想シーンが繰り返される構成については批判的な意見が散見される。映画評論家による評価であるため、一本の長編映画の構成としての評価を受けざるを得ず、同時に原作漫画を読んで展開を知っているかどうかで評価が分かれる部分もあるかもしれない。一方でサウンドやアニメーション、そして猗窩座の過去をめぐるストーリーについては、海外でも軒並み高い評価を受けている印象だ。
日本での公開から2ヶ月が経った時点で、全世界興収680億円超を記録している『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』。海外での評価も受けて、どこまで数字を伸ばしていくのか、今後にも注目だ。
『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は大ヒット公開中。
『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』の原作にあたる漫画『鬼滅の刃』の16巻・17巻・18巻は発売中。
『第一章 猗窩座再来』の続きは18巻の途中から始まる。
『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』はノベライズ版が発売中。
ゲーム『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』は8月1日発売。
Source
Variety / IGN / Chris Stuckmann YouTube / GamesRadar / RadioTimes / Rotten Tomatoes / The Guardian
アメリカのサンディエゴ・コミコンで開催された『鬼滅の刃 無限城』パネルの様子と海外の反応はこちらの記事で。
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