ネタバレ解説&感想『超かぐや姫』ラストの意味は? ネット発のポップカルチャーへの讃歌? 流れた音楽は? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『超かぐや姫』ラストの意味は? ネット発のポップカルチャーへの讃歌? 流れた音楽は?

©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

Netflixが生み出す新しいかぐや姫!

日本最古のSFとも呼ばれる『竹取物語』から始まり、仮想世界、バーチャルYouTuber、VOCALOIDといった現代のインターネット・カルチャーの融合を描いた『超かぐや姫』が2026年1月22日(木)よりNetflixで独占配信される。『超かぐや姫』は夢と希望に満ちた仮想空間『ツクヨミ』で、少女たちが歌によってつながる物語だ。

音楽が重要な役割を果たす『超かぐや姫』では、2007年にVOCALOID“初音ミク”が歌った楽曲「メルト」で旋風を巻き起こしたryoを筆頭に、yuigot、Aqu3ra、HoneyWorks、40mP、Livetuneたちインターネット発のミュージックシーンを代表するアーティストが集まった。また、監督には『チェンソーマン』1期(2020)や『呪術廻戦』1期(2020)のオープニングを担当した個性派アニメーターの山下清悟が起用されている。

そんなインターネット発のポップカルチャーを新進気鋭のクリエイターたちが描くNetflixアニメ映画『超かぐや姫』。本記事では、その解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容は『超かぐや姫』のラストのネタバレが含まれるため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『超かぐや姫』の内容に関するネタバレを含みます。

『超かぐや姫』ネタバレ解説&考察

昔々…ではない、ちょっと未来の話

単身、上京して暮らす女子高校生、酒寄彩葉。彼女の趣味は仮想空間『ツクヨミ』にコンタクトでアクセスしてFPSゲームをしたり、AIのトップライバーの月見ヤチヨの推し活をしたりすること。しかし、日々のバイトと学校生活で体は悲鳴をあげていた。

酒寄彩葉の設定は苦学生と言えば、苦学生とも言えるし、俗に言うリア充と言えば、リア充であるとも言える、普通の高校生だ。そんな彼女のもとに天から七色に光る“ゲーミング”電柱が降ってくることから物語は始まる。その中から赤ん坊が出てくるという奇妙奇天烈な事態に遭遇してしまう。

このとき聴いている彩葉が音楽は月見ヤチヨの「Remember」だ。クリエイターは「夢見る島」でボカロPデビューしたyuigot。月見ヤチヨの声優を務める早見沙織はミュージシャンとしても活動しており、その歌唱力は折り紙付きだ。また、歌詞は彩葉の未来を暗示したものとなっている。

当たり前になった仮想空間

仮想空間『ツクヨミ』のFPSゲームのバトルフィールドや音楽のライブ会場など、様々な世界が緩やかにつながっている設定は『サマーウォーズ』(2009)の仮想空間『OZ』『レディ・プレイヤー1』(2018)の仮想空間『オアシス』を想起させる。ある意味、海底もジャングルも探索されつくされた世界を生きる現代人にとって、インターネットの仮想空間は最後のフロンティアなのかもしれない。

言わずと知れたIT企業Googleの元CEOであるエリック・シュミットは、こんな言葉を残している。「インターネットは人類が初めて作った人智の及ばぬ代物です。それは人類史上最大のアナーキーな実験なのです」と。彩葉もそうだが、このちょっと先の未来の人々は仮想空間『ツクヨミ』に癒しを求めており、そこでは自由でちょっとアナーキーな世界観を楽しんでいる。

インターネットと現実の境は消えつつある。それに関して、「ネットは消えるというよりは、単に新しい空間を見出して、より押しつけがましくなく、わたしたちのまわりどこにでも存在するようになる」、「わたしたちはネットと接続したあまりにも多くのセンサー、アクセサリーに囲まれて、そのことに気付くのがどんどん難しくなるでしょう」とエリック・シュミットは語っている。

事実、彩葉も周りの人々も、そして現実の私たちも仮想空間と現実の境が曖昧になりつつある世界に生きている。急速に赤ん坊からティーエイジャーに成長した少女・かぐやは、自分は月での生活が退屈で地球にやって来たと語る。かぐやのような発達した世界の住人にとっては、地球での生活は仮想空間で羽を伸ばす感覚に近いのかもしれない。

めざせ!月見ヤチヨとのコラボ!

仮想空間『ツクヨミ』を開発し、運営している管理人にしてAIのトップライバーである月見ヤチヨは大規模なキャンペーン「ヤチヨカップ」を開催する「ヤチヨカップ」開催を宣言する前に歌っているのはAqu3raによる「星の降る海」だ。『超かぐや姫』で流れるすべての楽曲は、よく聴いてみると、彩葉の心情とリンクしたものとなっている。

ここで発表された「ヤチヨカップ」とは期間内に新規ファンを獲得した上位ライバーと月見ヤチヨがコラボライブするというもの。これまでコラボをしてこなかった月見ヤチヨとのコラボの権利を巡り、登場したのが帝アキラ率いる人気プロゲーマーグループの『ブラックオニキス』だ。

俺様キャラの帝アキラは月見ヤチヨとのコラボライブを高らかに宣言。それに対抗してかぐやは彩葉の推しである月見ヤチヨとのコラボのため、ライバーになることを決意する。そして、彩葉のプロデュースのもと、歌配信やFPSゲーム「KASSEN」の実況などで新規ファンを獲得していくのだった。

しかし、奨学金のために成績上位を維持しつつ、かぐやも含めた生活費を稼がないといけない彩葉は疲れて倒れてしまう。かぐやへのスーパーチャット、いわゆる投げ銭もあるものの、それでも彩葉の生活は簡単には楽にならない。この道のりの中で流れるのは恋愛楽曲の名手、HoneyWorksによる「私は、わたしの事が好き。」だ。

ここで彩葉が勝利といった結果にこだわる性格であることが明らかにされる。そのせいで自分で自分を追い詰めてしまったことで倒れてしまったのだった。それを心配するかぐやだったが、そこにランキングトップを走るブラックオニキスから「KASSEN」での勝負をしないかという一報が入る。

帝アキラの求婚

「ブラックオニキス」、通称“黒鬼”のリーダーである帝アキラの要求は、かぐやとの結婚であった。これは『竹取物語』で帝、つまり時の天皇がかぐや姫に求婚したことが元になっていると考察できる。なお、同じく『竹取物語』をモチーフにしたスタジオジブリ『かぐや姫の物語』(2013)では帝からの求婚により、かぐや姫が人間に対して嫌悪感を激しく抱く場面が描かれている。

近未来を舞台にしているとはいえ、帝による求婚を、「一方的な好意」や「自分に好かれて嬉しくないはずがない」という傲慢さ、そして「自分の求婚は受け入れられて当然」であるという有害な男性性が描かれていることから、その有害な男性性が『竹取物語』の根底にあるものなのかもしれない。

ここで、帝アキラが彩葉の実の兄であることが解説される。彩葉の家庭は優しかった父親の死後、結果にこだわる母親との間に確執が生まれたのだった。その際、兄は彩葉を庇うものの、彼女よりも先に単身上京。彩葉にとっての憧れの兄はいなくなり、孤独になった彼女はますます母親との関係が悪化し、彼女も家を出てしまった。

アキラが上京することに関して、母親が簡単に容認している描写があるが、これは諦めていると同時に長男であるアキラの判断が尊重されている場面とも受け取ることが出来る。彩葉は物語冒頭で喧嘩別れをするように上京したと解説されていたが、彼の上京にそのような印象を持ちにくいのは長男を優先する有害な男性性の演出かもしれない。

そういった意味では『かぐや姫の物語』の帝は悪役に近かったが、『超かぐや姫』の帝アキラは自分が持つ有害な男性性などを理解している節があり、彩葉と母親の緩衝材を買って出ている。そして、「ヤチヨカップ」の優勝のお祝いとして、彩葉の引っ越し先の保証人になったのだった。二人の新生活で流れるのはVOCALOIDの名曲「ハッピーシンセサイザー」だ。

『超かぐや姫』ラストネタバレ解説&考察

推しとのライブと近づく別れ

彩葉とかぐやは「ヤチヨカップ」の優勝賞品として、月見ヤチヨとのコラボライブを開催する。ライブは月見ヤチヨによる「ワールドイズマイン」から始まり、ryoによる「Ex-Otogibanashi」へと続いていく。

あくまでも現実から逃避の世界でしかなかった仮想空間『ツクヨミ』で、自作の楽曲を弾くことで、彩葉は失っていた夢を取り戻していく。その成功も束の間、襲撃者が現われ、インターネットは不調となる。襲撃者はヤチヨによって退けられるが、その存在はかぐやが月に帰る日が近いことを意味していた。

ライブ後、花火大会に出かける彩葉とかぐやの二人だったが、かぐやは現実世界が最高だと語る。そのまま、かぐやは月ではすべての存在に意味が与えられた電子制御のような世界で、かぐやにも役割があったと彩葉に告げる。自由奔放に見えた彼女も月での役割のために強制送還されるとのことだった。

日本最古のSFと言われる『竹取物語』を下敷きにしているだけあって、『超かぐや姫』の月の世界はシステマチックで、インターネットから接触してくるものと解説される。そのため、現実世界の方が素晴らしいと考えたのではないだろうか。『竹取物語』では、かぐや姫は月からの使者に羽衣を着させられるとすべての記憶が消えてしまい、人間ではなく天人となってしまった。

『竹取物語』の天人は地上を穢れた世界と評し、かぐや姫から翁に対して痛ましいや愛おしいと思っていた感情を消してみせた。そのことをインターネットに反映させてか、『超かぐや姫』の月の世界の住人は、AIやコンピュータープログラムの一種として描かれている。

昔とは違う結末へ

『竹取物語』では地上のものも、思い出も、すべては穢れたものとして消されてしまった。それをかぐやはバッドエンドだとしていたが、『超かぐや姫』では同じ結末にならない。彩葉やブラックオニキスたちは月からの使者が仮想空間『ツクヨミ』で撃退できたことから、FPSゲーム「KASSEN」の武器で対抗できるのではないかと考察する。

そして、かぐやの最後のライブを守り、『竹取物語』とは違う結末、つまりハッピーエンドをもたらすために月の使者との戦いに挑む。戦いの中、かぐやは新曲である40mPの「瞬間、シンフォニー」を歌う。このとき、VRの音楽ゲームであるBeat Saberのような演出が印象的だ。

最初こそ彩葉たちが優勢だったものの、多勢に無勢、彼女たちの防衛線を通り抜け、月の使者はかぐやの目の前に現れる。かぐやは月の使者を受け入れ、羽衣を身に纏い、無感情となってしまうのだった。

かぐやが去ってしまった現実を受け入れられないまま、迎えた夏休み明け。彩葉は大学進学に向けての活動など、日常に戻っていく、と思われた。そのまま、Netflixの次のおすすめのような映像が挿入されたかと思いきや、彩葉はハッピーエンドに向って新しい道へと突き進んでいく。

彩葉は竹取の翁のように、月の都へと去っていくかぐや姫の後ろ姿を見届けるだけではない。見送る親の立場ではない、親友、もしくは愛する人として横で一緒に歩く立場だからこそ、彩葉はかぐやと一緒に歌おうとしていた楽曲を完成させることを選んだのだと考察できる。

アバターの中身

なぜ、トップライバーである月見ヤチヨが彩葉に肩入れするのか。そして、彩葉が歌っていた歌を知っていたのか。彼女の正体は何者なのか。すべてが明らかになる。それはヤチヨの正体とは、未来のかぐやの姿だったのだ。

かぐやは彩葉の歌を聴き、再び地球に行くも、隕石にぶつかり失敗。それでも地球時間ではかなりの年月が経っていたため、時間を超えて彩葉に会いに行こうとしたかぐやだったが、それも失敗し、8000年前にタイムスリップしてしまう。そして、彩葉が生まれ、インターネット文化が成熟するまで待ち続けていたのだった。

ヤチヨがいつも楽しそうな理由。それは自分がアバターの月見ヤチヨとして仮想空間『ツクヨミ』にいるということは、彩葉が生まれた時代にようやく辿り着いたということを意味していたからだった。仮想空間『ツクヨミ』そのものが、彩葉を受け入れるために創り出された世界だったと考察できる。

それから10年の月日が流れ、彩葉は本当のハッピーエンドを目指す。彩葉は工学系の大学に進み、仮想空間『ツクヨミ』では味わえない味覚や嗅覚を得られる機械の身体を生み出すことに成功する。新たな身体を手に入れ、彩葉とかぐやの物語は続くのだった。

『超かぐや姫』ラストネタバレ感想

『レディ・プレイヤー1』っぽい仮想空間?

彩葉たちが過ごす仮想空間『ツクヨミ』は、クリエイター向けの世界であり、誰もが何かを発表できることが売り文句となっている。そして、そこで発生した利益は「ふじゅ~」という仮想通貨で取引され、それによって物品の売買が可能となる。この「ふじゅ~」だが、創作物を販売する以外にもFPSゲームなどでも稼げるとのことだ。

この設定は『レディ・プレイヤー1』の仮想空間『オアシス』に似ている。オアシスではコインという仮想通貨が取引されているが、稼ぐ方法は様々で、主人公パーシヴァルはレースゲーム脱落者のコインを集めている。彼の友人のショウやダイトウはFPSゲームができる世界でハンティングをして稼ぎ、エイチは様々な映画やドラマの乗り物を再現して販売している。

また、管理人がAIライバーとして、みんなから注目を集めているのも共通点だと考察できる。『レディ・プレイヤー1』では仮想空間『オアシス』を創ったジェームズ・ハリデーがAIのアノラックという形で死亡後も『オアシス』に残り続けており、その魔法使いのような容姿で人気のキャラクターとなっている。

また、アノラックがすべてのイースターエッグを集めた者に渡す仮想空間『オアシス』の権利を巡って登場するのがIOI社のシクサーズだ。特に社長のノーラン・ソレントは邪悪なクラーク・ケントのアバターで登場し、管理人の立場を奪おうとしている。

これはコラボライブの権利を奪い合うのと似ている。このノーラン・ソレントをマイルドにし、有害な男性性むき出しの嫌な中年ではなく、魅力的な若手ゲーマーにしたのが『ブラックオニキス』の帝アキラだと考察できる。

『レディ・プレイヤー1』は原作の『ゲームウォーズ』(2011)の出版時期も考えて、仮想空間『オアシス』をFPSゲームやレースゲームなど、ゲーマー文化の文脈で解釈したと考察できる。それに対して、仮想空間の捉え方や物語の構成に共通点は多いものの、『超かぐや姫』は仮想空間『ツクヨミ』をVtuberなどの推し活文化の文脈で解釈したことにより違いが出たとも考察できる。

これは登場人物の台詞からも感じられ、ゲーマー用語の多かった『レディ・プレイヤー1』に対し、『超かぐや姫』はVtuberに関する用語が多い。特に「ブラックオニキス」のメンバーとの戦い「KASSEN」では、多種多様なインターネットのミームが台詞として飛び出している。

ニコニコ動画全盛期を知る人たちへ

『超かぐや姫』は8000年前から一人の少女を待ち続けたかぐや姫の物語であるため、人類史だけではなく、インターネット黎明期から、その中でポップカルチャーが花開くまで描かれる。それを表現するため、ニコニコ動画全盛期と呼ばれる2000年代のインターネット発の音楽が多く使用されていると考察できる。

また、インターネットの用語もその頃から現代のものへと移り替わっていく様子が描かれており、懐かしさを感じる一方、新しさも感じることができる。これは常に移り替わるインターネットを象徴している演出だと言えるだろう。

この常に移り変わりゆくという設定は伝聞で現代まで残っている『竹取物語』に通じるものがあり、その一方で変わらないものもあることが、待ち続けていたかぐやという形で描かれる。映画はここで終わるが、かぐやは物語は終わらないと解説する。それは、『超かぐや姫』も『竹取物語』の派生作品として語り継がれていくことを意味しているのではないだろうか。

『サマーウォーズ』の『OZ』、『レディ・プレイヤー1』の『オアシス』に続き、現代解釈で新たにモデリングされたインターネット上の仮想空間『ツクヨミ』の映像美は圧巻の一言に尽きる。今後、かぐやたちはどのような未来を歩むのか。インターネット発のポップカルチャーの未来と合わせて、注目していきたい。

『超かぐや姫』は2026年1月22日(木)よりNetflix独占配信。

『超かぐや姫』配信ページ

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『サマーウォーズ』のネタバレ解説&考察、感想はこちらから。

『レディ・プレイヤー1』のキャスト・吹替声優まとめはこちらから。

『レディ・プレイヤー1』で流れた音楽はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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