2015年公開の映画『HERO』
木村拓哉主演、人間味のある検察の姿を描いて絶大な人気を呼んだ「HERO」シリーズ。2001年にドラマの第1シリーズが放送された後、2006年に特別版が放送され、2007年に劇場版が上映、2014年にドラマのシーズン2が放送され、2015年に劇場版の第2弾が公開された。
今回は、木村拓哉が主演を務めた2015年公開の映画第2弾『HERO』について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末のネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから呼んでいただきたい。なお、本作のタイトルの正式表記は『HERO』だが、本記事では便宜上『HERO2』と表記する。
以下の内容は、映画『HERO』(2015) の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『HERO2』(2015) ネタバレ解説&考察
ドラマと映画前作からの繋がりは?
2015年に公開された映画『HERO2』は、①2001年に放送されたドラマ版第1期、②2006年に放送されたドラマスペシャル、③2007年に公開された劇場版第1作目、そして④2014年に放送されたドラマ第2期に続く、⑤劇場版第2作目。後に「マスカード・ホテル」シリーズを手がける鈴木雅之監督が、映画第1作目に続いて指揮している。
映画『HERO2』の舞台は、ドラマ第2期の直後で、木村拓哉演じる型破りの検察官・久利生(くりゅう)公平は、東京地検城西支部で検事として働いている。久利生は『HERO』のラストでは沖縄の石垣支部に異動、札幌支部を経てスペシャルドラマでは山口県の虹ヶ浦支部に赴任、2007年の映画版からは6年ぶりに城西支部に復帰、その後また石川の支部を経てドラマ第2期から城西支部に復帰していた。
映画版『HERO』第1作目からドラマ第2期の間に数年が経過しており、初期の検事は全員入れ替わっている他、久利生公平につく事務官も、松たか子演じる雨宮舞子から北川景子演じる麻木千佳になっている。
そんな中でも第1作目から続投しているのが八嶋智人演じる遠藤賢司、小日向文世演じる末次隆之、正名僕蔵演じる井戸秀二の3人の事務官だ。井戸は第1期の警備員から事務官に転職している。また、角野卓造演じる部長検事だった牛丸豊は東京地検本庁の次席検事に出世している。
これらの面々はドラマ第2期でもメインキャラクターとして登場していたが、2015年の映画『HERO2』では、松たか子演じる雨宮舞子が映画第1作目以来のカムバックを果たす。
久利生と雨宮の関係は?
ドラマ第1期では、積極に「お出かけ」して捜査権を行使、事件の真相を追う型破りな検事・久利生公平に対し、雨宮舞子は振り回されながらも影響を受けていた。ラストでは、雨宮は石垣島に飛ばされた久利生を追いかけて行ったが、後に久利生が捜査に夢中になり、雨宮を3日間も放置していたことが明らかになっている。
映画第1作目では、共に傷害致死事件に取り組む中で大物政治家の贈収賄疑惑に切り込むことになり、韓国・釜山を訪れる場面も。二人は事件を見事真相解明に導くと、ラストで口づけを交わす衝撃的な展開が用意されていた。
これで雨宮と久利生はハッピーエンドかと思いきや、7年後のドラマ第2期では、二人は付き合ったものの、久利生はまたも転勤となり、雨宮も城西支部を離れることに。二人はそれで別れてしまったようだ。
元々検事を目指していた雨宮は、映画『HERO2』ではついに検事になって登場。大阪の難波支部で広域暴力団二崎会の恐喝事件を担当していたが、その事件の証人である森カンナ演じる三城紗江子が東京で事故死したという知らせを受けて、大倉孝二演じる事務官の一ノ瀬隆史と東京に向かうことに。
だが、三城が死亡した交通事故の事件を担当していたのは、他でもない久利生公平だった。さらに久利生にはドラマ第2期から担当事務官になった麻木千佳がついている。こうして事件の真相と久利生&雨宮の気まずい関係をめぐる物語が展開されるのが、2015年公開の映画『HERO2』である。
外交特権というテーマ
もう一つ、2015年公開の映画『HERO2』の重要なテーマとなるのが、ネウストリア公国大使館を相手にした「外交特権」という壁である。ネウストリア公国というのは架空の国で、言葉はフランス語を使用している。
ちなみに、ネウストリアという言葉自体はフランス北部の地域名として実在した。久利生たちが大使館職員と近づくためにプレイするペタンクという競技もフランス発祥のスポーツだ。ネウストリア≒フランスとして観てもよいだろう。
暴力団による恐喝事件の証人であった三城は、ネウストリア公国大使館のそばで車にはねられていた。久利生公平は大使館に話を聞きに行こうとするが、大使や外交官は原則として逮捕・拘束できず、捜査への協力を強制できないとする「外交関係に関するウィーン条約」が立ちはだかる。
日本は1964年に批准しており、これにより大使・外交官は原則として逮捕・拘束できない。また、行政機関は緊急時を除き大使館に立ち入ることや捜査を行うことができず、外交官を原則起訴することもできない。理不尽なようにも感じるが、このウィーン条約のおかげで日本の外交官も赴任国での不当な逮捕や拘束から守られているという背景もあるのだ。
映画『HERO2』で事態がややこしくなるのは、ちょうどその頃、佐藤浩市演じる外務省欧州局長の松葉圭介がネウストリア公国との貿易交渉を行なっていたからだ。司法と貿易、法律と商売、正義と外交が対立するのである。
ちなみに松葉に呼び出された後に、法務省から出てきた久利生が「何も変わってねぇな、ここ」とつぶやくのは、ドラマ第2期で特捜部に派遣された時に一時的に法務省で仕事をしていたからだ。
城西支部、アッセンブル
久利生公平のポリシーは、被害者の味方となり、手を抜かずに真実を追求することだ。久利生と雨宮が検事同士として再会を果たし、共に捜査を行う姿は感慨深い。雨宮もまた、久利生の影響で自ら動いて捜査を行う検事になっているからこそ、東京まで足を運び久利生と再会することになったというのは因果である。
一方で雨宮は大阪の弁護士・矢口からプロポーズを受けていた。矢口を演じるのはお笑いコンビ・アンジャッシュの児嶋一哉で、二人はお見合いで出会ったようだ。なお、映画『HERO2』には、お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜も、角野卓造演じる牛丸の“そっくりな娘”役でスマホの待受として出演している。近藤春菜の「角野卓造じゃねぇよ」というツッコミを踏まえた演出だ。
一時は大阪に戻った雨宮だったが、久利生は暴力団が絡む今回の事件を深追いしたことで命を狙われ、ダンプカーにはねられてしまう。これを受けて城西支部の検事たちは総力をあげて捜査に取り組むことを決意。ようやく総力戦が幕をあけるのだ。
杉本哲太演じる田村雅史検事、吉田羊演じる馬場礼子検事、濱田岳演じる宇野大介検事、そして川尻部長検事らと協力し、一同は、税関をノーチェックで通れるネウストリアの外交官が違法薬物を暴力団の二崎会に流しているという推理に辿り着く。二崎会の恐喝事件の証人・三城を死に追いやったのは、ネウストリアの外交官で事件の日に三城と写真に写り込んでいたコールマンか、コールマンと繋がっている暴力団員ではないかというのだ。
久利生をひいたダンプカーは二崎会の傘下にある会社で発見。さらに馬場礼子と井戸のコンビによって二崎会の構成員とネウストリアの外交官が荷物の取引を行う場面も押さえることに成功する。ちなみに井戸はドラマ2期の時点で新婚で、礼子と飲みに行く場面もあったが、他の男性たちと違い礼子を恋愛対象として見ていない。
大阪に戻った雨宮も、賑やかに事件の捜査を行う城西支部の面々の声を末次からの電話越しに聞き、再びの上京を決意。末次が電話をかけた用事は、お土産のたこタコスの作り方を聞きたいというものだったが、雨宮に城西支部の声を聞かせて焚き付ける狙いがあったのではないだろうか。
雨宮も合流し、久利生と雨宮はネウストリア公国大使館のパーティーに潜入し捜査。三城は大使館の裏口から飛び出して車にはねられたという推理に辿り着くが、二人は大使館員に捕えられてしまう。しかし、そこに現れて二人を釈放したのは、大使のジャック・ローランだった。
ジャック・ローランは序盤のネウストリア料理店で、久利生に声をかけた酔っ払い客だったのだ。「国境を越える」と、自らネウストリアのことを知ろうと歩み寄った久利生に好感を抱いていたのだろう。同じく序盤の貿易交渉では、新任の大使は「お飾り」とされていたが、権限はある。
二人は釈放されるも、外務省の松葉に見つかり、叱られることに。だが、久利生はそこで、三城の友人の携帯に残されていた、亡くなる2分前の三城からの電話の留守電で、背後から流れていた音楽が大使館の時計の音であったことに気が付いたのだった。
映画『HERO2』(2015) ラストをネタバレ解説&考察
vs 松葉欧州局長
これで三城が死の直前にネウストリア公国大使館にいた可能性が濃厚になった。しかし、問題は証拠があったところで、外交官相手には裁判を行うことができない。そこで久利生たちが頼ったのは外務省欧州局長の松葉だった。
映画『HERO2』(2015) のクライマックスでは、「名探偵コナン」のような推理パートが繰り広げられる。大使館の裏門近くに三城が購入した靴と同じ装飾品が落ちていたこと、久利生をはねた運転手の家から2キロもの覚醒剤が押収されたこと、そして留守電に大使館の時計の音が残っていたこと……。
そして松葉は、天気予報の中継でブツの取引をした場面が映り込んでいた人物の画像を見て、ネウストリア公国大使館No.2のヴェルネ公使だと指摘する。さらにコールマンは大使館で働いているが外交官ではないとも。つまり、コールマンについては起訴できる可能性があるのだ。
とはいえ、状況証拠は揃っているが、ここからは政治の話だ。国境を越えてでも正しいことを行うべきだとする久利生に対し、松葉は「国同士の交渉はそんな生やさしいものではない」と反論する。
それでも、料理やスポーツを通して国境を越えようとしてきた久利生は、嘘をつかれて騙されてもいいから、ちゃんと会って目を見て話がしたい、法の番人である検察はそうあるべきなのだと説得する。この久利生の“意見陳述”は、人間同士分かり合えるという単なる理想論ではなく、騙されてもいいからプロとしてはそうでなければならないという仕事論でもある。
そうして心を動かされた松葉は、自らネウストリア料理店を訪れ、ローラン大使と遭遇。あれだけ貿易交渉で会いたがっていた大使は、自ら足を伸ばせばそこにいたのである。
事件の真相&決着は
久利生はローラン大使からネウストリア公国大使館に呼び出され、ついに大使館の扉が開く。以前は大学で法律を教えていたというローラン大使は、「ルールは守らなければならない」として、薬物の密輸取引を行っていたヴェルネは外交特権を手放さずに帰国させると宣言する。
一応、派遣した国側が不逮捕特権を手放すという手段もあり、2024年5月にはシンガポール大使館の外交官が銭湯での盗撮容疑の嫌疑をかけられた際に、シンガポール側が「外交特権を放棄する用意がある」と表明したことがある(出頭要請を受けて停職処分となり再来日したため、特権は適用も放棄もされず、略式起訴となった)。
ローラン大使の場合、ヴェルネは帰国させるが、ネウストリア公国で裁判を受けさせるという。違法薬物の密輸は重大な犯罪であるため、その国での出来事にその国の法律を適応する属地主義ではなく、犯罪が行われた場所に関係なくその国の法律を適応する属人主義が採用されるのだろう。
一方、外交官ではなく外交特権のない一般職員であったコールマンは日本の捜査当局に引き渡されることに。これでようやく二崎会の恐喝事件と三城の死亡事故の件が動くことになる。
最後にローラン大使は、昨晩、松葉がレストランで貿易交渉よりも久利生検事の話を聞いてあげてほしいと依頼してきたと明かす。松葉は外交よりも真実の追求を選んだのだ。久利生ら検事たちに突き動かされたのだろう。
後日、コールマンの聴取によって、三城は大使館の裏門から飛び出してそのまま車にはねられたことが明らかに。三城をはねた容疑者は不可抗力だったとして不起訴になる。
事件の真相を整理すると、①コンパニオンだった三木紗江子は二崎会のゴルフコンペに参加した際に恐喝に関する会話を聞き、恐喝事件の証言を行う予定だった、②都合が悪くなった二崎会は密輸で繋がりのあったネウストリア公国大使館にヘルプを依頼、職員のコールマンが大使館で三城に接触、③三城は脅されたのか慌てて大使館の裏庭のドアから飛び出して車にはねられた、コールマンはこれ幸いと見て見ぬ振りをした、という具合になるのだろう。
ラストの意味は?
最後に残る“問題”は久利生と雨宮の恋の行方だ。事件が解決し、麻木が雨宮に「久利生さんのこと、好きだったんですか?」と聞くと、雨宮は「大好きだった」と答える。非常に珍しい、シラフでの素直な表明だ。しかし、過去ではある。
雨宮は、久利生を「私に大切なものを気づかせてくれる人」と表現する。今回の事件でも昔のように検事としてのハートに火をつけてくれたからだろう。その後、久利生のことを麻木に託した雨宮だったが、プロポーズを受けていた矢口には別れを告げる。まだ検事として何もできていないと言うのだ。
矢口の「勝手な人だなぁ」という雨宮への評価は、先ほどの雨宮から久利生への評価と重なる。さらにそこに久利生が現れると、雨宮は春から石垣支部に異動になると明かす。もしかすると雨宮は、矢口と婚約しても、かつての久利生が石垣でも仕事に夢中になったように、自分も矢口を放置して不幸にしてしまうと考えたのかもしれない。
ドラマ第1期のラストでは、久利生が石垣島に飛ばされ、雨宮がそれを追いかけてきて幕を閉じている。日焼けのくだりも、その時二人が交わしていた会話を踏襲している。この時、今度は久利生が雨宮を追いかけて行ったらどうなっていたのだろうか、と想像せずにはいられないが、二人ともプロの検事として、それぞれの道を歩んで行ったのだった。
2015年公開の映画『HERO2』のラストでは、久利生と麻木がネウストリア公国を訪れている様子が描かれる。結局久利生は二崎会の事件を追及し、帰国させられたヴェルネに会いに来ていたのだった。麻木もまた検事を目指してはいるが、久利生と麻木のコンビがまだしばらく続くことを示唆して映画『HERO2』は幕を閉じている。
映画『HERO2』(2015) ネタバレ感想
久利生・雨宮・麻木のその後は?
2015年に公開された映画第2弾『HERO』以降、「HERO」シリーズは10年以上新作が制作されていない。30%を超える月9史上最高の平均視聴率を記録した伝説的な作品だ、新作制作には高いハードルがあるのだろう。
久利生と雨宮のその後はどうなったのだろうか。雨宮は久利生に憧れ、似てしまったが故に二人は一緒になることはできなったのだろう。だが、それは決して不幸ではなくて、検事として多くの真実を探究するという、より大きな目的のためにの別れだったのではないだろうか。
一方、久利生と麻木は12歳差(40歳と28歳)という年齢差もあってか、恋愛関係にはならなかった。『HERO2』の作中では久利生から麻木に「自分と雨宮くらべんな」「今の俺のパートナーはお前」という言葉も受けているが、これはあくまで仕事上のパートナーということだと解釈できる。
いずれにせよ麻木が久利生のような検事を目指すなら、いずれは久利生・雨宮のような“勝手”で芯の強い検事になるのだろう。それぞれが歳をとった姿を改めて見てたい。
絶妙なテーマ設定と決着
映画『HERO2』は、映画の公開当時は日本政府の法務省も本作をバックアップしたため、“国策”的な動きで反感を買ったという背景もある。一方、外国人や移民の排斥ムードが高まる2026年に観直すと、ともすれば「外国人犯罪」というような排外的ななテーマにもなり得る設定を置きつつ、うまい着地点を描いていたように思う。
もちろん“扉”を開いたのは久利生らだが、外交特権を崩して法を執行するというような展開ではなく、最後は外国政府の自浄作用によって解決するという決着が用意されていた。新任の大使は部下たちから十分な情報が得られていないという背景も描かれており、大使館の中に善悪のポジションを用意し、主人公側がきっかけを作った上で、相手国に解決を委ねたのだ。
また、久利生が扉を開いた方法も、料理を食べて、スポーツを楽しむという久利生らしい“歩み寄り”の外交だった。何より、大きな事件を解決したいということではなく、交通事故の真相を解明しようとして、「小さな事件にも全力であるがゆえに大きな事件と接続していく」という、いつもの展開を継続したことで、下手に説教くさくならない構造にもなっていたようにも思う。
続編はある?
2026年2月現在、久利生役の木村拓哉は53歳、雨宮役の松たか子は48歳、麻木役の北川景子は39歳となっている。木村拓哉は『グランメゾン東京』(2019) のシェフ役や「教場」シリーズの警察学校教官役など、50歳を超えてお仕事ものの作品でより輝きを増している。
松たか子も主演映画『フォーストキス 1ST KISS』(2025) で演じた、15年前にタイムトラベルしてかつての夫を責めながらも救おうとする主人公の役など、一層魅力を増している。北川景子は2024年に第二子が誕生し、2025年からは再びドラマや映画で主演を務めている。
ドラマにせよ映画にせよ、ハードルの高さから『HERO』の第3作目の制作は難しいとは思うが、できれば久利生公平の“去り際”も見てみたい。久利生が後世に何を残すのか、そして雨宮と麻木はどんな検事人生を送ったのか、想像を膨らませながら、続編が実現する日を待とう。
映画『HERO』(2015) は配信中。
ドラマ『HERO』はFODで配信中。
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