映画『ほどなく、お別れです』ネタバレ解説&感想 ラストの意味は? メッセージと教訓を考察 | VG+ (バゴプラ)

映画『ほどなく、お別れです』ネタバレ解説&感想 ラストの意味は? メッセージと教訓を考察

©2026『ほどなく、お別れです』製作委員会

映画『ほどなく、お別れです』公開

長月天音の原作小説を実写映画化した『ほどなく、お別れです』が2026年2月6日(金) より全国の劇場で公開されている。『ほどなく、お別れです』は、原作者が夫との離別を経て書き上げた作品。故人と話せる能力を持つ主人公の清水美空は、葬儀会社で働き始め、葬祭プランナーの漆原礼二から厳しい指導を受けながら、力を合わせて遺族と故人に「区切り」の時を提供する。

実写映画版『ほどなく、お別れです』で監督を務めたのは『夏への扉 -キミのいる未来へ-』(2021)、『知らないカノジョ』(2025) で知られる三木孝浩。脚本監修を岡田惠和、脚本を本田隆朗が担当した。主演は浜辺美波目黒蓮、さらに故人や遺族にも豪華キャストが配されている点も本作の見どころだ。

今回は、映画『ほどなく、お別れです』を、特にラストの展開と作品のメッセージに焦点を当ててネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末のネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、本作は親族や子どもの病死・事故死を扱っており、記事内でもその内容に触れているのでご注意を。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ほどなく、お別れです』の内容に関するネタバレを含みます。

映画『ほどなく、お別れです』ネタバレ解説&考察

美空と漆原の出会いと柳沢家

映画『ほどなく、お別れです』では、連作短編となっている原作小説のスタイルを踏襲し、主に4つの葬儀が描かれる。浜辺美鳥演じる清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場の坂東会館で働き始め、目黒蓮演じる漆原礼二から厳しい指導を受けつつ、故人と遺族に寄り添っていく。

いわゆる“葬儀もの”である本作を特別なものとしているのは、主人公の美空が故人の姿が見え、対話することができるという点だ。この“スーパーパワー”は、遺族に寄り添うという葬式のあり方をもう一段階深めることになる。

各葬式のシーンは、やはり“悲劇”であり泣けるのだが、さまざまな形の悲劇が全く陳腐になっていない。その理由は、脚本と演出の力はもちろん、故人と遺族を演じたキャスト陣にもある。

映画『ほどなく、お別れです』の冒頭では、お腹の中の子どもと共に転落死した柳沢玲子を古川琴音、妻と子を失った柳沢亮太を北村匠海が演じた。美空は玲子からの「ちゃんと生きて」という伝言を亮太に伝え、一方で生まれてくるはずだった子どものオムツを棺に入れることで“区切りの儀式”を終える。

このケースでは、茫然自失としていたが哀しみを経て生きる活力を取り戻す夫の姿が、北村匠海によって見事に演じられている。そして、漆原の「ほどなく、お別れです」という言葉で葬儀が締め括られ、故人と遺族、その両方が新しい一歩を踏み出すことになる。

美空が遺族と話せることを知った漆原は美空をスカウト。就活中だった美空はインターン生として働き始めることになる。

久保田家の未練

最初の葬儀で故人と遺族が心を通わせ、区切りをつけることの重要性が描かれると、二つ目の葬儀では死を乗り越えるためのコンセプトが描かれる。志田未来演じる久保田理恵渡辺圭祐演じる久保田宏之の夫妻は、英茉演じる久保田比奈を先天性の病気で若干5歳で失う。

漆原は夫妻と、美空は比奈と向き合うことになるのだが、美空は5歳の比奈に死を受けて入れてもらうこと(いわゆる“成仏”)に苦労する。そこで用いられるのが、死とは、遠いところへ先に行って大切な人が来るのを待っているだけだというコンセプトだ。

美空は自分が生まれた日に姉の美鳥を失っていたが、夏木マリ演じる祖母の花子は自分が死ねば「美鳥が迎えにくる」と、再会を心待ちにしてもいた。死とは永遠の別れではなく、一時の別れであるという発想に、美空はたどり着くのである。

久保田家の葬儀シーンでは、子役時代から俳優として活躍し、映画『ほどなく、お別れです』公開時点で32歳となっている志田未来の演技が凄まじい。娘を失った母の姿を見事に演じている。比奈は向こう側で父と母を迎え入れることを受け入れ、理恵はぬいぐるみの中に入っていた手作りの金メダルによって、比奈が幸せを感じていたことを受け入れて、久保田家は区切りを迎える。

長野家のすれ違い

柳沢家は残された者、見送る側が区切りをつけられないというケースだったが、久保田家の場合は故人・遺族が共に未練があり区切りをつけられないというケースだった。そして、漆原自身も区切りをつけられていない遺族であったことも明らかになる。

漆原は過去に妻を交通事故で亡くし、葬儀の喪主を務めたが、区切りをつけられないまま生きてきた。ずっとつけている結婚指輪はその象徴だとも言える。

その経験を経て漆原は葬祭プランナーとなり、さらに納棺師の遺体を棺に納めるという仕事も自ら行い、遺族に寄り添うようになった。宣伝ではないが、映画『ほどなく、お別れです』の葬儀監修に入っている「おくりびとのお葬式」は、すべての担当スタッフが納棺師の資格を持っており、納棺も同社で行うことで知られる。

そうした経緯から、「遺族の気持ちしか分からない」と言う漆原。故人の気持ちを知ることができる美空との間に溝が出来る場面も描かれる。母を事故で亡くし、兄妹で葬儀を行おうとする長野家の葬儀での出来事である。

西垣匠演じる翔一久保史緒里演じる玲奈の兄妹は、野波麻帆演じる母・桂子を亡くすが、美空は桂子から、原田泰造演じる借金をして離婚した正史に会えなかったことが心残りだったと聞く。しかし翔一は父・正史を恨んでおり、ここで故人と遺族の思いにすれ違いが生じてしまう。この時、漆原は遺族の側に立つのだ。

しかし、遺品整理を行う中で、桂子が正史から長野県の霧ヶ峰高原の写真ハガキを受け取り続けていたこと、正史は親友の連帯保証人になったことで借金を負い、自己破産するために家族のもとを離れていたことが明らかになる。ちなみに自己破産を行ってもその家族の財産や信用には影響はないが、例えば持ち家など家族共有の財産については処分の対象になる。

長野家は霧ヶ峰高原で葬儀を行い、父子の和解を通して区切りを迎える。父・正史役の原田泰造の雰囲気と演技が、ダメな父だけどダメすぎない、お人好しで転落していったパパという印象で良かった。故人・遺族のすれ違い、そして残された人同士のわだかまりの克服が描かれ、『ほどなく、お別れです』では、最後の葬儀が描かれる。

映画『ほどなく、お別れです』ラストをネタバレ解説&考察

清水家にあったわだかまり

映画『ほどなく、お別れです』の最後の葬儀は、美空の祖母・花子の葬儀だ。花子はかつて名のある芸者で、坂東会館の社長・坂東稔も美空のことを「清水さんとこのお嬢さん」と認識していた。そんな大物感漂う花子にも、心残りがあった。

『ほどなく、お別れです』で随所に挿入されている、美空が生まれた日に川に落ちて亡くなった姉・美鳥の話である。鈴木浩介演じる清水佑司が永作博美演じる美波の出産に立ち会っている間、花子と散歩に出掛けていた美鳥が繋いでいた手を離して川の方へ消えてしまったのだ。

このシーンは映画『ほどなく、お別れです』の冒頭で描かれているシーンなのだが、以来、美波と花子はわだかまりを抱え、互いにその出来事に蓋をしたまま生きてきた。美波がその”恨み”を吐き出すシーンも永作博美の演技が圧巻だ。妻と実母の間に立つ夫という難しい役を演じた鈴木浩介の演技も絶妙である。やはり本作はキャストの名演によって数段感動のレベルが上がっている。

美空は両親に、死んだ祖母と話したこと、美波に謝りたかったが言い出せず後悔していると話していたことを伝える。故人も遺族も同じ想いを抱えていたが、共有することができなかったというパターンだ。

最後に漆原は、美鳥が亡くなった川原で花子と美鳥を一緒に送りだすことを提案。娘の死に区切りをつけられずに長い時を過ごしてきた清水家の区切りの儀式を行うのだ。川原を訪れた美波は、そこに咲くたんぽぽを見つけ、美鳥はきっと生まれてくる美空にたんぽぽを採ろうとして駆け出したのだろうと想いを馳せる。

実際のところ、美鳥が死んだ事故にはいくつかの要因が絡んでいた。両親が共働きで美鳥がずっと花子に預けられていたこと、美空が生まれた時におそらく佑司が花子に電話をかけて花子の注意が逸れたことも要因といえば要因である。清水家はそうした話を共有して、きちんと気持ちを処理することもできたかもしれないのだ。

ラストの意味は?

これが“後悔”で終わらないのは、花子は大好きな孫の美鳥と一緒に向こう側に行くのであり、いずれ美空たちも一緒になれるというコンセプトがあるからだ。美空の視点を通して花子と美鳥が手を繋いでいる姿が映し出されることで、その理想は事実として描かれる。

最後に漆原は、美空に「ほどなく、お別れです」を託すと、後日、美空は正式に葬祭プランナーとして働くこと。だが、美空は自分が生まれてきた時に美鳥が亡くなり、時折美鳥が導いてくれているのを感じていたことから、美鳥が祖母と一緒に旅立った今、故人と話すことはできなくなったかもしれないと考えていた。

それでも、漆原はそのスーパーパワーではなく、葬祭プランナーとしての美空を「必要な存在」として認めたのだった。なお、美空のスーパーパワーがなくなったかもしれないというのは美空の予想でしかない。物語の続きは原作小説で描かれている。

小学館
¥554 (2026/2/15 17:39:40時点 Amazon調べ-詳細)

このシーンで美空は、「ほどなく、お別れです」という「まもなくお別れです」という意味の言葉を「ほどなくのお別れ」、つまり、少しの間のお別れという意味だと解釈する。漆原はその解釈を受け入れると、これから亡くした妻に再会するまで、再会した時にかける言葉を考えておくと笑顔を見せる。やっと笑ってくれた。厳しい漆原さんとのギャップがすごい。

エンディングで流れるのは手嶌葵の「アメイジング・グレイス」。同曲は讃美歌だが、「私は迷子だったが、今は見出された」「その恵みが私を天国へ導いてくれる」と、葛藤する遺族と故人を導いていく本作の内容に重なる歌詞が歌われている。

映画『ほどなく、お別れです』ネタバレ感想

メッセージと教訓

映画『ほどなく、お別れです』は、美空と漆原のバックグラウンドを軸に置きつつ、4つの葬儀を通して感動の物語を描く作品だった。一つでも冷めるエピソードがあれば雰囲気が崩れてしまうリスクのある構成だが、感動の連続を陳腐なものとしない演出・脚本・演技が揃っていたように思う。

『シン・仮面ライダー』(2023)、『ゴジラ-1.0』(2023)、『アンダーニンジャ』(2025) など、SF映画への出演が続いている浜辺美波は、今回も良い意味で“浜辺美波”な演技を見せた。俳優として快進撃が続く目黒蓮は、遺族に対する誠実な姿と美空へのドSな姿、そして妻に見せた無邪気な姿と、見事なギャップ=演技の幅を見せている。

唯一違和感があったのは夏木マリの“おばあちゃん”の演技で、声優を務めた『千と千尋の神隠し』(2001) の湯婆婆を思わせる声使いや言い回しはやや、やり過ぎな感があった。脚本と演出の注文に依るところも大きいのだとは思うけれど。

作品の内容を私たちの現実に照らし合わせて考えてみると、現実には死者と会話するスーパーパワーを持った葬儀屋というのは存在しない。故人の声を聞いて故人と遺族の両方が前を向けるようにするという『ほどなく、お別れです』のコンセプトは、転じて、現実世界の私たちは生きている間に後悔のないよう言葉を交わし、心を通わせている必要があるという教訓にもなる。

日本の良くも悪くもみなまで言わない文化のせいもあって、私たちは正直な気持ちを身近な人に伝えきれていないかもしれない。漆原が言ったように、葬式が結婚式と違う点は、準備ができないということだ。いつ何があっても後悔しないように、あるいは後悔させないように、大切な人と大事な時間を過ごそうと思わされる映画だった。

気になるのは、続編があるのかどうかということだが、映画『ほどなく、お別れです』は公開から1週間で興行収入11億円を突破するヒットを記録、原作も4巻まで刊行されている。引き続き、さまざまな事情を抱える人々の葬儀を描く物語が実写映画化されることに期待しよう。

映画『ほどなく、お別れです』は2026年2月6日(金) より公開中。

角丸ボタン

長月天音による原作小説は小学館文庫から発売中。

小学館
¥508 (2026/2/15 17:33:42時点 Amazon調べ-詳細)

続編『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』、第3作目『ほどなく、お別れです 思い出の箱』、最新刊の第4作目『ほどなく、お別れです 遠くの空へ』も発売中。

小学館
¥554 (2026/2/15 17:39:40時点 Amazon調べ-詳細)
小学館
¥577 (2026/2/15 17:39:53時点 Amazon調べ-詳細)
小学館
¥847 (2026/2/15 17:40:06時点 Amazon調べ-詳細)

込由野しほ作画による漫画版は5巻まで発売中。

小学館
¥759 (2026/2/15 17:39:26時点 Amazon調べ-詳細)

【ネタバレ注意】映画『教場 Reunion』の解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】Netflix映画『This is I』の解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の解説&感想はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
お問い合わせ

関連記事

  1. 『We Live in Time この時を生きて』フローレンス・ピューが撮影秘話を明かすインタビュー映像が到着

  2. 草加は死んだはず? 『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』 ネタバレ考察&解説

  3. 『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]』予告編解禁 おかえりニコルソン長岡大喜、相澤隼人らの姿も

  4. 「悪夢みたいな人かと」映画『エディントンへようこそ』より、ペドロ・パスカルが本音を語るキャストインタビューが解禁