SF作家対談 林譲治×春暮康一:デビュー・二冊目・アンソロジーを語る。〆切とクオリティを守れるか | VG+ (バゴプラ)

SF作家対談 林譲治×春暮康一:デビュー・二冊目・アンソロジーを語る。〆切とクオリティを守れるか

先行公開日:2023年5月20日
一般公開日:2023年6月24日

SF作家対談:林譲治×春暮康一

2023年2月末、SF作家の林譲治春暮康一の対談インタビューが収録された。このインタビューはSF同人誌のSFGと、オンラインSF誌 Kaguya Planet による共同取材で実施されている。SFGでは「宇宙」をテーマに両作家の作品について、Kaguya Planetでは両作家のキャリアや作家としての姿勢について伺った。

林譲治は言わずと知れた人気SF作家。1999年に「SFマガジン」に掲載された短編小説「エウロパの龍」でデビューし、≪星系出雲の兵站≫全9巻で第41回日本SF大賞、第52回星雲賞日本長編部門を受賞している。2023年4月には、≪工作艦明石の孤独≫シリーズの完結編となる第4巻が刊行されたばかり。また、2018年から2020年までは日本SF作家クラブの会長を務めており、現在は日本SF作家クラブ編のアンソロジー企画で中心的な役割を果たしている。

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春暮康一は2019年に第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞した『オーラリメイカー』でデビュー。その後、短編小説の発表を重ね、2022年には第二作目『法治の獣』が刊行された。『法治の獣』は「SFが読みたい!」の国内篇ベスト1位に選ばれており、デビューから3年足らずで人気作家の座にのぼりつめた。2023年7月19日には、大幅改稿と新作中編を加えた『オーラリメイカー〔完全版〕 』の刊行も予定されている。

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今回は、作家として異なるキャリアを歩んできた二人に、デビューまでの道のりや、第二作目を出すまでの経緯等についてお聞きした。また、企画者と参加筆者という立場の二人から、アンソロジー企画の裏側についても話を伺っている。 二人の作家が語るこれまでの道のりと現状とは――。

林譲治×春暮康一:デビュー・二冊目・アンソロジーを語る。〆切とクオリティを守れるか

インタビュアー:齋藤隼飛

デビューへの道

——本日はよろしくお願いします。まず、お二人のデビューの経緯をお訊きしたいのですが、林さんはコンテストを経由した訳ではないんですよね?

:はい。僕の場合は当時、たまたま作家の森岡浩之さんがうちの近所——武蔵小金井で中央線を挟んで反対側くらいの所——に住んでたんですね。それもあって知り合いだったんですが、『星界の紋章』(1996) がブレイクした頃に、森岡さんに頼んで早川書房の編集者の方のメールアドレスを教えて頂き、完全に持ち込みで出したんです。持ち込んだやつは没になったんだけど、とりあえずそれをきっかけに「SFマガジン」で短編を書いて、それからですね、早川書房と仕事をするようになったのは。だから僕の場合、デビューの経緯は完全に持ち込みでした。

——デビュー作は「SFマガジン」だったんですね?

:商業デビューとしては1999年の「SFマガジン」に載った「エウロパの龍」が最初です。それからしばらくは短編を「SFマガジン」に載せて頂きました。でも、その頃は結局次の作品も載せてもらえるかが全く分からなかったので、とりあえず今の内に書けるものを全部注ぎ込もうという姿勢でやっていました。

3作目の「ウロボロスの波動」の時は、短編はどれも原稿用紙50枚という指定があったんですが、「次があるか分からないから書けるだけ書こう」と思っていたら150枚になってしまいました。それで、編集長の塩澤快浩さんの方で75枚ずつで前後編にするということにしてもらいました。それと「ヒドラ氷穴」もやっぱり前後編になったんですけど、この二つは別に中編を書いたつもりはなくて出発点は50枚の短編の筈だったんですけど、書けるだけのもんを突っ込んでしまおうと書いたら150枚になってしまって前後編になってしまったんです。最初に大体見積もった量に収まるようになったのは割と最近ですね。

——その頃は、他のSF作家さんもデビューしようと思ったら持ち込み、という感じだったのでしょうか?

:どうなんでしょう。あの頃から塩澤さんは「この人はいけるんじゃないか」って人に声を掛けて「SFマガジン」デビューをさせていたって聞いてますね。持ち込むような図々しい奴は僕くらいしか居なかったんじゃないかと思います(笑)

——新人はファンジン(同人誌)等から見つけてきていたのですか?

:塩澤さんが結構色んな所にアンテナを張っていたのは記憶しています。打ち合わせや雑談の中で意外なものを持ってたとか意外な話が出たとか。あの頃(1999年)から特にライトノベル系に関しては関心を持ってたみたいですね。僕はとりあえず持ち込みっていう形ではあったんですけど、架空戦記で書ける奴が居ないか探してた時期でもあったらしいんですね。そういう意味では、結果から言えばタイミングが良かったっていう感じですね。

——一方で春暮さんは小説を書き始めた大学生・大学院生の頃は新人賞がまだなかったということですが、その頃の書くモチベーションというのはどの辺りにあったのでしょうか?

春暮:モチベーションというより、その頃は単に個人の趣味でした。最初の頃は誰にも見せるつもりがなかったんですよね。家族にも見せてないし友達とかにも見せてないんです。今思えば、何で書けてたのかよく分かりません(笑) 自分の中で気の利いた文章が書けたとか、面白いアイディアが書けたということで当時は満足していまして。完全に自分一人で完結していましたね、最初の内は。それこそ新人賞に応募するようになるまではそうでしたね。

——一緒に書いていた人とかライバルというような存在もなく?

春暮:全然居なかったですね。私の周りにはそういう小説を書いている人や、SFを好きな人さえ居なかったんですよ。大学のSF研究サークルとかそういうのがあれば、そこに顔を出せば居たのかも知れないですけどね。それすらしてなかったんで。私の交友範囲の中では全然SF友達もライバルも居なかったですね。

——その後、創元SF短編賞に応募されて、ハヤカワSFコンテストにも応募されるようになりました。応募してみようと思ったきっかけというのはありますか?

春暮:賞が出来た時点で気になってはいたんですよね。その賞が出来た時点で確か2作か3作くらい自分の中で短編があって、それはそれで満足してたんですけど、賞が出来たとなるとせっかくだから出してみたいなという思いにもなりました。創元SF短編賞の3回目か4回目か、それくらいの時に初めて出しました。

——コンテストに出した時もお一人で書かれていたということですよね?

春暮:そうですね。誰にも「試しに読んで」とか言いませんでしたし、本当に賞だけですね、出したのは。

——最近はSNSのコミュニティを通じてデビューするパターンも増えてきましたが、一方で自分一人でコツコツ書いてコンテストでデビューする道筋も確保されているべきだと思います。春暮さんはまさにその形だったということですね。

春暮:そうですね。賞が出来る前にも小説の投稿サイトとかはあったと思うんですけど、その当時は外に出す気持ちがなかったというのが実際のところです。

二冊目への道のり

——お二人はそれぞれ違う形でデビューされたということですね。デビューした後の2冊目以降が課題になるというお話を出版社の方から聞くことがあります。お二人が1回チャンスを掴んでからの2冊目、その次に辿り着くまでの経緯をお聞かせください。

:僕の場合は、塩澤さんと話した時に「とりあえず短編を集めてゆくゆくは短編集にしましょう」という話が割と早めに出ていました。雑誌デビューから『ウロボロスの波動』という短編集になるという道筋自体は割と早めに出てたんです。あれは確か〈Jコレクション〉で刊行という形になって、その後で長編を書くということになりました。

ちょっと昔のことなので詳しくは覚えていないんですが、とりあえず雑誌に短編をいくつか出した段階でそれをまとめて短編集にしましょうという話自体は出ていたので、短編が本になることだけは決まっていたんです。

長編になるかどうかというのはその時点では未知数だったんですが、〈Jコレクション〉が始まったお蔭で長編を書く場が与えられました。確か2002年だったかな、〈Jコレクション〉というレーベルが立ち上がった時期に書けたというのは非常に幸運でした。僕が持ち込みしたのも98年の終わりくらいだったので、良い時期だったなと思いますね。

春暮:私から質問させて頂いてもいいですか? 林さんは例えば編集者の方から、まずは長編を書いてみてくれという要望はなかったんですか? 最初から短編集ということだったんでしょうか。

:そうですね、最初は短編集でした。結局、こちらが書けるかどうかというのは向こうも博打だったんだと思いますね。コンテストを経由した訳でもないし、出していたのも架空戦記だけでしたし。ある程度、長編を依頼しても大丈夫という信頼を得るまでは短編で、ということじゃないですかね。長編企画も、僕の方から「長編書いていいですか」と打診しました。《星系出雲の兵站》(2018-2020)に関しては、これは逆に塩澤さんの方から依頼があって、ミリタリーSFっぽいものを書いてくれませんかと言われて書きました。

春暮:そうだったんですね。私自身は、第二作は強く言われた訳じゃないのですが、できれば長編が望ましいと編集の方からはアドバイスされていて。最近は短編集とかアンソロジーが人気ですが、2019年頃は編集者の方の認識としては長編の方がインパクトがあったり、話題に上げてもらいやすかったりということで長編を出してみたらと勧められまして。それでちょっと質問させて頂きました。

:やっぱり時期の問題というのもあるみたいで、アンソロジーが多く出た時期もあれば長編中心の時代というのもあったみたいですね。

——春暮さんの第二作目『法治の獣』は、元々ハヤカワSFコンテストに応募されていた作品なんですよね。

春暮:そうなんですよね。だから実は『法治の獣』収録の三編は全て『オーラリメイカー』よりも前に書いた作品なんですよね。勿論当時書いたものから大きく改稿したので、文量的にも増えていますし内容的にも変わった部分はあるんですけど。「法治の獣」と「方舟は荒野をわたる」の二つは『オーラリメイカー』以前にハヤカワSFコンテストの方に送ったものでした。「主観者」は創元SF短編賞に送ったものの改稿という形になります。

——これらの作品が「SFマガジン」での掲載を経て二冊目として刊行されることになるわけですが、その経緯をお聞かせください。

春暮:『オーラリメイカー』の授賞式の時点で、付いて頂いた担当編集者の方から「第二作、どういう風にしましょうね」という話は頂いていました。当時は、できれば長編が望ましいけれど短編集にしたければ短編集でも勿論いいよということは言って頂けていたんです。自分としては読むのも短編集が好きですし、その時まだ長編を書いたことがなかったのですが短編についてはある程度ストックがあったので、「できれば第二作は短編集がいいです」ということを編集者の方に連絡させて頂きました。その後、編集の方にそれまでに書いていた小説を片っ端から送りまして、加えて「自分としては、こういう組み合わせで出したいです」というのを連絡したという流れですね。

実は第二作に取り掛かったのが結構遅かったんです。かなり前に小説を担当編集者の方に出していたのですが、その後は「SFマガジン」に載せる短編などの仕事もしていたので、具体的に第二作で短編集を作りましょうとなったのは結構あとの方でしたね。その時は、私としては今回の3編に加えて「同じ世界観だけど生物系ではない」短編も入れて4編にしたかった。でもやっぱり出版社さんの方から「コンセプトは明確にした方が良い」と言って頂いたので、それで収録作を3編にしたという経緯があります。

——なるほど。その経緯はあまり聞けないところなのでお聞きできてよかったです。やはり、作家さんは編集者の方の話を聞いてそれに対してちゃんとレスポンスをしていけば次に繋がっていくということでしょうか。

春暮:そうですね。編集者の方もやっぱりこちらのことをちゃんと考えてくれていますし、こちらとしても編集者の方の考えることには耳を傾けてほとんど従ってます(笑)

作家として大切にしていること

——お二人が作家としてのキャリアを積んでいく中で大切にしていることをお聞かせください。

:これは結果論ですが、〆切を守ることです(笑) 結構それって大事らしくて、特に架空戦記の場合がそうだったのですが、「愚直に〆切を守っていると仕事は来る」というのは実感しましたね。

以前は結構〆切を守らない人が多かったらしくて。これはもう時効だからいいと思うんだけど、ある出版社が「8月15日に合わせて架空戦記作家をまとめて新刊を出そう」という企画を立てて、僕もそれに合わせて原稿を出したんですよ。でも、その時期になってもやるって言ってたフェアをやらないんで「どうしたんだろう」と思ってたら、〆切を守ったのが僕だけだった(笑)

そんなこともあったし、あるとき原稿を納入して、「本来だったら今月出るよな」と思ってたら出なくて、「どうしたんだろう」と思ったら「〇〇先生の原稿がやっと入ったんで、そっちを優先しました」とか(笑) 「次いつ納品されるか分からないんで」って言われて、「まあそれならいいんですけど」っていうこともありましたね。

結局、〆切を守らないと何が困るかっていうと、イラストレーターさんについても原稿を見てからイラストを発注するので、単に僕が遅れましたということだけじゃ済まないんですよね。イラストレーターさんの仕事の質にも関わってきます。編集者だけじゃなくて装丁とか、本の制作には色んな人が携わるから。それを考えるとやっぱり他人の仕事に影響するので、基本的に〆切は守るようにしています。どうしても遅れる時はもう「遅れます」と先に言って、とりあえずイラストが発注できる分だけ送りますとか、そういうことをやってきました。

——大事なことですねえ。

:それのお蔭で生き残ってこれたんだと思います(笑)

——春暮さんはいかがですか? キャリアを積んでいく中で大切にしていること。

春暮:私はまだキャリアがほとんどないので、どちらかと言うと「これから大切にしていきたいこと」ですね。まだ仕事がそんなに沢山来ているということではないので、基本的なスタンスとしては、自分で編集部の方に「こんなの出来ました」っていうのを送って、運が良ければSFマガジンに掲載してもらえると、今のところはそういうスタンスです。

今の時点で私が考えてるのは、当たり前ではあるんですが「自分自身が面白いと思うものを書く」ということです。というのも、結局自分が面白いと思っていれば読者から評価されなかったとしても凹むというよりは先に腹が立つと思うんですよ(笑) 腹が立った方が凹むよりはまだマシかなという風に思っていて。

と言っても、今のこの考えは自分の好きなタイミングで作品を送っているからできる訳であって、例えば今は林さんが仰ったような〆切とかもない訳です。そういう仕事をこれからさせてもらえるようになれば、〆切と自分の中でのクオリティが両立できるかという問題が出てくると思うんですよ。その時でも、とにかく面白い、自分で納得できるものに仕上げたいなという思いはあって、それは大切にしていきたいなと思っています。

——林さんは、「〆切」と「自分が面白いと思うものを書く」こととのバランスというのはどう取られているんですか?

:そうですね、自分が面白いと思っているものは、割と一日に書ける原稿の枚数が進むんですよね。

春暮:確かに。

:ダメな時、原稿が進まない時って明らかにこの方向性で行っちゃダメだなっていうのが分かる。進まない時は、ちょっと方向を変えなきゃダメだろうなと。結局そのまま進んで原稿が出来上がっても本筋から離れているというか、今までやってきたことの意味がないかもしれないという風になることもあるので、この方向性はダメだなと思ったら、その時点でやめます。多少遅れが出ても、今まで書いてきた何十枚かはもう捨てるっていうこともしなきゃならない時はあります。

春暮:その見切りの付け方は凄いですね。私だったら勿体なくて捨てられない気がします(笑)

:なんかこう、書いてて泥沼に嵌まってるなという感覚があると、そういう時は引き返します。どこかが間違っているということだから。

——林さんの場合、「書ける」ということと「自分が面白いと思う感覚」が直結しているということですね。

:自分で「あ、良いじゃん。面白いじゃん」と思えるのが一番大事ですね。

アンソロジーを作る/アンソロジーに参加する

——林さんは作家としてのキャリアを積みながらも、ここ最近は「日本SF作家クラブ編」という形で、若い作家さんを含めて作品発表の場を提供する立場にもあると思います。『2084年のSF』にも春暮さんが参加されました。こうした動きが始まったきっかけを教えていただけますか。

:『ポストコロナのSF』に関して言えば、パンデミックの当事者である訳だから当事者としての作家がこの時代の証言として短編集を残しておく価値があると思って、あの企画を進めました。そういう意味では、時代の証言だからできるだけ多くの、そしてできるだけ若い作家に「今」という立場で作品を書いてもらい、十年後にまたそれを読み返すなりしてもらって、あの当時の意識と今の意識っていうのはどう違うんだろうっていうことを再確認してもらうことでまた一つ何か生まれるんじゃないかなと。あのアンソロジーに関しては出発点はそこだったんですね。

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「ポストコロナ」をやってる過程で、今若くて才能のある作家さんはものすごく多いのでその人たちにもっと書いてほしいなと思うようになりました。それで、もう一回アンソロジーを組みたいなと思ったんです。その意味では「ポストコロナ」と「2084」は、アンソロジーを組む動機がちょっと違っていました。できるだけ多くの作家に参加して欲しいという思いがあって、「2084」の方は「ポストコロナ」に参加した人は参加せず、全員新規でということにしました。

今、第三弾(『AIとSF』2023年5月23日(火)発売)が進んでいて、その人選は縛りなしにしています。これはもう完全に読者として、凄い才能豊かな作家さんがいっぱいいるんで、そういう人の書いた作品を読みたいんですよね。それも再録じゃなくて書き下ろしで読みたいと。だから「2084」以降のアンソロジーについて言えば、これはもう僕が読者として楽しみたいという若干不純な動機で(笑)

早川書房
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——人選は林さんがされたんでしょうか?

:いえ、人選は早川書房サイドと日本SF作家クラブサイドで選んで、あとはクラブ内の公募で書いてもらって梗概を歴代の会長の人に見てもらい、その中で人気だった人を選ぶということをやりました。僕だけで選ぶと完全に僕の好みになってしまう。それは避けたいので、他の人の意見も聞くようにしました。企画としての試行錯誤もあるんですが、基本的には公正に選ぶ方向で考えてます。

「ポストコロナ」の企画を起ち上げた時は僕がSF作家クラブの会長だったんですが、その後、僕は監事になってたので、一会員として理事会に提案して理事会の承認を得て、出版社と交渉していきました。「ポストコロナ」とそれ以降は僕自身のSF作家クラブでのポジションが変わりましたし、「2084」以降は一会員として企画提案を行い、理事会の承認を得て、という流れです。ただ出版社さんとの繋がりがあるので交渉役は僕が継続しているというだけです。

——春暮さんが『2084年のSF』に参加された経緯はどのようなものだったのでしょうか。

春暮:2021年の11月くらいに早川書房の担当編集の方からメールで「こういう企画に参加しませんか」というお話をいただきまして。それで「是非やらせてください」ということで、多分12月末か1月くらいに「こういう感じでどうでしょう」というプロットを出させていただきましたね。当時「SFマガジン」の編集長だった塩澤さん経由で依頼がきたという形だったと思います。その時の内容としては、ハヤカワSFコンテストだったり創元SF短編賞出身の新人作家の方を中心に声をかけているということは聞いていました。ただ、その後にどういう経緯で執筆者が決まったのかというのは、今林さんから初めてお話を伺いました。

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——アンソロジーの企画側と執筆者と、それぞれの視点のお話が聞けて興味深いです。日本SF作家クラブ編のアンソロジーとしては、次は竹書房さんから『お仕事SFアンソロジー 24時間働きますか?』(2023年7月5日(水)発売予定) を刊行されるんですよね。

林:これも一会員として、会長、事務局長経由で理事会に提案して承認され、OKがもらえました。

——作品を書きながらの精力的な活動、すごいですね。

林:まあでも編集の方に丸投げしてるようなもんですから、僕自身の負担はそんなにないんです(笑)

——藤井太洋さんが2022年のSF大会で「林さんはアンソロジストだ」と言われていましたが、いかがですか?

林:アンソロジストというよりは、なんでしょうね。企画請負人みたいな感じなのかな。他のアンソロジストの方みたいに色んな企画に発表された作品を一つのパッケージにして集めるっていうやり方じゃなくて、僕は「こういう人たちに新しく書き下ろしを書いてください」ってお願いをする形です。井上雅彦さんの《異形コレクション》に近いですね、むしろ。

やっぱり、いい加減歳をとった作家として、若い人にいかに書く場を用意するかっていうのは責務としてあるよなというのが自分の中であります。その中でアンソロジーの企画は進めたいと思うのですが、最近ロシアのウクライナへの侵攻の影響か紙の値段も上がってきてなかなか出版が厳しくなっているので、この先どう企画を進めたものかというのは、ちょっと迷いもありますね。できたらどういう形にせよ続けていきたいとは思うんですけれども、まあ出版事情次第というところもあります。

何らかの企画、関係作家を集めてセッションをやるとか、そういうイベント込みで企画を広げていく形が求められているのかなとか、漠然と考えてはいます。単純にアンソロジー/本を出しました、それで終わりという形では、これからはちょっともう厳しいのかなという感触はありますね。

——春暮さんはこうした先輩作家さんの動きをどう見られていますか?

春暮:いやもう本当に有難い限りですね。裾野が広がってきて、作家さんの方がかなり増えてきているので、やっぱり作品を紹介する場っていうのは喉から手が出るほど欲しいんですよね。なので、こうしたアンソロジーを企画していただいて本当にありがとうございます。

:とんでもございません。参加してくださる方がいればこその企画なので。

春暮:多分みんな参加したいと思いますよ。

:そうだとは思うんですよね。読み手としてもやっぱり「あの人のあれをまた読みたい」というのもいっぱいあるし、それをやっていくと1冊、2冊じゃ終わらないですよね。

春暮:そうですね。他に目当ての作家がいるけど、一緒にアンソロジーに参加してたこの人の小説面白いな、ということで新たに読んでもらえるということもあるので、やっぱりそういう場があるとすごい嬉しいですね。

今後の展開

——では、そろそろ締めの質問として、今後について聞かせていただきます。春暮さんは別のインタビューでも長編を執筆中とお話されていましたが、何か他にこういうサブジャンルで書いてみたいというのがあればお聞かせください。

春暮:そうですね、今の興味としては「変な生き物」とか、そういうものを書きたいというのが根底にありますが、勿論それ以外にも書きたいとは思っています。ただ、ジャンル単位で「こういうのが書きたい」というのは実はあまりないんですよね。最初に書きたいアイデアがあって、それを活かせるようなストーリーだったり舞台を考えるっていう形で書いているので、実を言えばファーストコンタクトものが書きたいと思って書くのではなく、結果的にファーストコンタクトになってしまったりするんです。なのでサブジャンルにもあまりこだわりはなく、飽くまでアイデアありきでそこから出発して展開を考えるというだけですね。

——ありがとうございます。今後についてお二人は「こういうのがやりたい」というような展望などはおありでしょうか?

春暮:2023年は今書いている長編に注力するつもりで、その合間に短編を少しずつ発表していければいいなと思っています。できれば第2短編集のようなものを、2023年は無理だと思いますけど、2024年に出せたらいいなと勝手に思っています。まだそういう話を編集の方としてる訳ではないんですが、自分の中ではストックとしてあるので、それも近い内に短編集として出したいなというのは思ってますね。執筆ではない会社の方の仕事もあるので、しばらくは私自身としては執筆以外の仕事というのは大々的にはやらないつもりでおります。

——ありがとうございます。林さんはいかがでしょうか。

:『工作艦明石の孤独 4』が4月に出てこれで完結です。その次について編集の方と相談中というところですね。あとは2023年中にミステリーが一冊出る予定です。嫌な話、「イヤミス[編注:読後に嫌な気持ちになるミステリーのこと]」みたいなやつです。長い目で見ると日本の陸海軍の兵站のノンフィクションを書きたいと思って資料集めをしていたんですが、厄介なものがあることが分かって、割と軽く考えていたものが面倒臭い事実関係が見つかり、それを調べるのに時間が掛かっちゃうのでこれは数年後になるかもしれません。

日本SF作家クラブ編のアンソロジーとしては、2023年は今のところ竹書房『お仕事SFアンソロジー 24時間働きますか?』と早川書房『AIとSF』の二つです。三つ目にも着手したいなとは思ってるんですけど、ちょっと国内外の状況が分かりませんからね。文句があったらプーチンに言ってくれよ、というところです。

——本日はありがとうございました。


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日本SF作家クラブ編『お仕事SFアンソロジー 24時間働きますか?』は7月5日(水) 発売。

このインタビューはSF同人誌の「SFG」と共同で実施したもので、『SFG vol.05』宇宙特集号にも別パートが収録されていす。『SFG vol.05』はBOOTHで頒布中。こちらもぜひゲットしてみてください。

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SFGと共同取材を行った大森望のインタビューはこちらから。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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